PANORAMA STORIES
q.b.レシピのないレシピ帳~南瓜のリゾット~ Posted on 2026/03/10 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア

冬の終わり、そして春の始めのこの時期が、僕はほんの少しだけ苦手です。自然も町も日毎に活気づいていく中、もうちょっとのんびりとしていたい気持ちと、そして目前に迫った繁忙期への焦りとで、何だか周りから取り残されてしまったような心許なさがあるのです。そうは言っても現実は甘くなく、じきに慌ただしい日々が巡ってくるのですが、始まったら始まったで心も次第に軽やかになることでしょう。さて、このオフシーズン中も沢山の出来事がありましたが、そのうちの一つを振り返ってみたいと思います。

冬枯れの街路樹にイルミネーションが灯り始めるころ、僕は実家がある北海道にいました。寒さが本番を迎え、道路が根雪でおおわれる前に帰省したかったので、シーズンが終わると直ぐにチケットを取りました。乗り継ぎと長いフライトを経て日本に降り立つとまず感じるのは、懐かしさや安心感ではなく独特の静寂です。それは空港でも、都会の真ん中でも、田舎の駅のホームでも共通して空気に漂う日本特有の雰囲気のようなもの。イタリアとは何もかもが違いすぎて、どちらが良いとかではなく、今までの出来事がまるで夢だったかのような錯覚に陥ります。

特に今回のように一人で帰国した時は、人生の半分以上を海外で過ごしているなどとは信じ難い気持ちにもなったり。実家に着き、自分の部屋から見える静かな住宅街は、僕が住んでいた時とさほど変わらず、夢見る少年だった頃の気持ちが残り香のようにどこからともなく立ち上っては、ふっと消えていきました。もしも日本に住んでいたならどんな人生だったのだろう?最初の数日間は時差ボケもあったりして、そんなふわふわとした感情の波間を漂うことが多いのです。

それでも暫くするとやる気も出てきて、何か作ってみようかと、スーパーやデパートの地下街に食材の下見に行き始めました。北海道とイスキア島では気候も風土も違うので、いつも使っている野菜や魚介類を探すのはなかなか難しいのですが、何件か回っているうちに手ごろな値段で良さそうなものを見つけることができました。しかし驚かされたのは同じ食材でも風味の濃さが全く違うということでした。日本の食材も十分美味しいはずなのに、イタリアにいる感覚で調理すると少々味気なく感じてしまい、戸惑うことがありました。けれど、もっと食材を吟味したり、少し工夫を加えることで美味しくできたので、料理とは奥が深いものだと改めて思い知らされました。そうして何度か日本で料理した中から、今回は南瓜のリゾットをご紹介したいと思います。
北海道は南瓜の一大産地でもあります。イタリアで使う一般的な南瓜とは種類が違うので少し不安でしたが、仕上がりは大きな差はありませんでした。国産の冬の南瓜は旬が過ぎてしまったかもしれませんが、今は1年を通してスーパーで売っていると思うので、機会があれば挑戦してみて下さいね。
南瓜のリゾット

材料(2人分)
○お米(あればリゾット用の。無ければ普通のお米で) 160g
○南瓜(皮を除いて)200g
○ブイヨン 約400ml(又は同量のお湯に少量のコンソメを入れたもの)
○パルミジャーノ 約60g ○白ワイン コップ半分程
○玉ねぎ 4分の1程
○燻製プローヴォラチーズ(又は燻製スカモルツァ、普通のモッツアレラでも)80g程
○バター ひとかけ ○オリーブオイル q.b. (適量) ○塩胡椒 q.b.
○バジル又はイタリアンパセリなどのハーブ q.b.
作り方
①フライパンにオリーブオイルをひと回し入れて熱し、小さめの角切りにした南瓜を加えて形が崩れ始めるまで炒め、火を止めます。必要に応じ、少量の水を炒める途中で加えます。

②鍋にバターをひとかけ入れ、みじん切りにした玉ねぎを炒めます。次にお米を入れて表面がうっすら透明になるまで弱火で1分ほど炒めます。この工程はお米の表面をオイルでコーティングし、煮崩れを防ぎアルデンテに保つために大切です

③ワインをお米に加えて、アルコールを飛ばします。アルコールが飛んだら中火にし、小鍋で温めておいたブイヨンをお米が浸るくらいまで加えます。そして炒めておいた南瓜も入れて混ぜます。

④木べらで時折混ぜながら、ブイヨンを少しずつ足して煮ていきます。塩胡椒をしますが、後でチーズが入るのでここでは薄めにしておきましょう。軽く芯が残るくらいになったら火を止め、角切りにしておいたプローヴォラ、削ったパルミジャーノチーズを加えてよく混ぜ、塩加減を調整し、蓋をして1分ほど休ませます。バジルやイタリアンパセリも入れると爽やかな風味になります。


⑤お皿に盛りパルミジャーノチーズをかけて出来上がりです。
燻製プローヴォラやスカモルツァは僕は比較的すぐに見つけることができましたが、無ければモッツアレラや他のチーズで代用してみて下さい。
それではまた次回、普段着の食卓でお会いしましょう!

Posted by 八重樫 圭輔
八重樫 圭輔
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シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。


