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ザ・インタビュー「フランスで評価を得つつある日本人俳優、成田ゆみ」 Posted on 2021/08/13 Design Stories
現在、フランスで公開中の話題作、「TOKYO SHAKING」で準主役を演じ、話題になっている日本人俳優がいる。しかも、次回作は日本で大ヒットした「カメラを止めるな」のフランス・リメイク版なのだという。日本ではなく、渡仏し、俳優を目指した成田ゆみさんに、その動機、そして、評価を得るまでのここまでの日々についてを聞いた。
ザ・インタビュー「フランスで評価を得つつある日本人俳優、成田ゆみ」
design stories(以下、DS) 成田さんはフランスで俳優業をされている。フランスに渡って何年目でしょうか?
成田 ゆみさん(以下、敬称略「成田」) もうすぐ9年になります。
DS それまではフランス語は話せなかった?
成田 話せなかったです。日本の大学でフランス語を勉強していたので、ベースは少しあったのですが、全然喋れなかったです。
DS 日本で、俳優として活動歴はあるのですか?
成田 日本は大学を卒業してすぐフランスに来てしまったので・・・。大学時代はインディペンデントの映画とかをひたすらやっていました。なので、キャリア的にはフランスに来てから始めた感じです。
DS 今はフランスのマネージメントオフィスに入られていますが、フランスに来ていきなり入れたわけではないですよね?
成田 全然です。事務所に入るまではすごく時間がかかりました。そもそもフランスの芸能関係の仕組みがわかっていなかったので、そこからリサーチを初めて、最初はもうどんどん断られて。だから最初はひたすら学生のプロジェクトとかをやって、最初の事務所というのはCM関係の事務所で、しばらくして、経験をある程度積んでからようやく今の事務所と契約できました。
DS それはどういう契約なんでしょう?
成田 日本のシステムが私にはわからないのですが、歩合制です。オーディションに受かって、映画やテレビの出演が決まったら、契約金の10%をマネージャーさんが取っていくという形です。
DS 向こうが一応お膳立てはしてくれるんですか?
成田 そうですね。日本の役者さんに話を聞くと、日本は事務所の力とか、プッシュアップがすごくあると思うのですが、そういうのはあまりなくて、マネージャーさんは契約書を書いたり問題があったときに介入するとか、オーディション情報を回してくるとか、必要最低限のサポートだけですね。あとは全て自分です。
DS 基本的には自分が何かアクションを起こすんですね? マネージャーさんが現場に来てくれたりもするんですか?
成田 私のマネージャーさんはすごくいい方だったので現場にも来てくれますが、たいていのマネージャーさんは来ないですし、興味もないみたいですけど。
DS でも、いつでもやめようと思えばやめられる?
成田 はい。変えたいと思ったらすぐ変えられますので、変える人もたくさんいます。
DS そういう世界を知るために9年くらいかかったということですね。
成田 めっちゃくちゃかかりました(笑)!
DS 最近はいろいろな映画にも出ているみたいですが、活躍して日の目が出つつある中で、一番起点になったというか、大きなチャンスになったのはなんでしょう?
成田 2年前、まだ右も左もわからなかった時期に、こっちで活動されている日本人の女優さんの先輩がいらっしゃって、その方と出会ったのがきっかけになります。いろいろ教えていただいたり、一緒に劇なんかもやったりして、今回の映画のオーディションも彼女が紹介してくれました。彼女もオーディションを受けているのに私にも教えてくださって。それが今回公開された映画「Tokyo Shaking」なんですが。私の方が受かってしまって、そこから事務所が決まったり、状況が変わりました。
DS 評判はどうですか?
成田 メディアの評判は良くて嬉しいです。時期的に観客動員数は人が戻っていないし制限をしていたりするので難しいですけど・・・。でも、どの映画も同じなので。
DS 準主役をされたんですね?
成田 そうですね。その前にも小さい役をしていましたが、これが一番大きい役でした。
DS そして、次の映画も決まっているようですが・・・。
成田 はい、この前撮影が終わったばかりですが、日本のホラーコメディ映画「カメラを止めるな」のリメイク版に出させていただきました。フランス人の監督、ミッシェル・アズナヴィシウス氏と一緒にお仕事させていただきました。
DS 僕はオリジナルも見てないんだけど、かなり話題になりましたね。全てフランス人でされているんですか?
成田 はい、そうです。私の役は日本のバージョンにはなかった役なんです。これ以上は言えないのですが、日本でも上映されることが決まっているみたいです。
DS その先も仕事は決まっているんですか?
成田 いくつか受けているオーディションの結果待ちです。あとは、ショートムービーの撮影がいくつか入っています。同時進行でいろいろやっています。
DS オーディションってどれくらいの頻度で受けるのですか?
成田 今はCMのオーディションはあまり受けていないので、テレビと映画で月に1回くらいですね。(CMのオーディションも受ける時は月4−5回くらいになります)というのは、日本はCMっていいイメージがありますけど、フランスは俳優としてあまり良いイメージがないので、マネージャーさんからできるだけCMはしないで欲しいって言われてます。フランスは映画に出るなら映画のイメージを大切にしているので。CMはどうしてもランクが下がったようなイメージをつけられてしまうみたいです。もったいないなと思うんですけど。
DS たしかに、・・・。
成田 でも、ブランドの香水とかのCMになるといきなりハリウッドスターがでてきたりする。格差がすごいんですよね。
DS 成田さんは、日本でも仕事されたりするんですか?
成田 日本でもオーディションを受けたりし始めています。でも、日本は事務所に入っていないので周りのネットワーク経由のみですね。たまたま知り合いになったオーディション担当者の方なんかからご紹介いただいたりして。
DS フランス語をすごくお上手ですが、全て独学?
成田 独学と、あとは4年間演劇の学校に行っていたので指導してもらいました。それに加えてトマティスという発音矯正センターに行ったり、声優学校に行って発音を練習したりしました。
DS パリに暮らし出して9年間、大変なこともあったと思います。生きていくために、日々をどう食いつないでこられたのでしょう?
成田 最初は役者の仕事なんて何もないので、とりあえず会社を見つけて、「ゼロから頑張ります」とアシスタントをさせていただきました。日本の某商社のフランス支店です。当時雇っていただいて、そのおかげで他の活動ができました。あとはCMをやってお金を貯めて、今はアーティストが登録できるアンテルミッタンという仕組みがあるので、それで時間を集めて、なんとかなっています。
DS 頑張りましたね。
成田 30歳までに芽が出なかったら諦めようと自分の中でリミットを決めていました。
辻 仕事とプライベートのバランスとかはどうなんでしょう?
成田 今、友人たちが結婚して家族を作る年齢になって。でも私は今、やっとお仕事をもらえるようになってきたので、仕事とプライベートのバランスは本当に考えるところですね。18歳から役者を目指し始めて、人より時間がかかったので、ようやくっという気持ちがあるから、今すぐに、家族を持つというのはちょっとまだ考えられないです。
DS 日本のご両親も心配でしょうね。
成田 最初はもう、大反対でした。父なんかは硬い仕事をしている人だったので・・・、だからずっと言ってなくて(笑)。
DS じゃあ、大学を出て、フランスには留学という感じで渡ったんですね。
成田 そうです。1年後には帰ると約束して。それからずっと1年ずつ延びていって(笑)。最終的に2年くらい前に仕事を認めてくれました。「Tokyo Shaking」の撮影が日本であったので、その時に家族を現場に連れてくることができて、父が初めて、「こんなに厳しい仕事だとは思わなかった」と言って理解してくれました。
DS フランスは仕事はしやすいですか?
成田 しやすいです。ヒエラルキーとかもあまりないし、みんな平等でフランクで、撮影中も、日本の撮影現場はあまりわからないですけど、こっちは失敗しても回し続けて何回もできるし、やりやすいです。
DS やっぱり映画がいいのですか?
成田 舞台は見るのも演じるのも大好きです。ただ、あまり機会がないんです。今、自分でも脚本を書いているんです。初めての短編映画を書いていて、これからプロダクションを探したりするために動いています。これからは役者だけじゃなくて監督としてもやっていけるように。夢は大きく(笑)。
DS わあ、羨ましい。夢がたくさんって、いいことですね。がんばってください。新しい映画、楽しみにしています。
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