ノルマンディ、ツジ村便り
辻村相談窓口、「絵のこと」 Posted on 2026/04/15 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
さっそくですが、辻村の相談窓口を開店させて頂いたいと思います。
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匿名希望Yさん
「辻さん、こんにちは。ノルマンディがどういうところかわかりませんが、毎日、アップしてくださる写真から、勝手にノルマンディを想像して楽しんでいます。ところで、夏に日本で個展があり、秋にパリでアートフェアがあり、11月にリヨンで個展があるとのことですが、どうやって、作品を描き分けているのか、そして、お客さんは同じようなタイプの方々なのでしょうか? 場所によって発表する作品は異なるのですか?
単純に、辻さんのことは小説家として知るようになったので、絵のことを少し知りたいな、と思いました。よろしくお願いします」

おこたえしまーす。
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「ちょうど、昨日、東京での個展用の約60作品に一度目のニスを塗り終わったところです。このあと、全作品の撮影をやり、梱包をしますが、その前に、二度目のニス塗りをやります。(ニスは長期保存のため、10年の一度は塗って貰いたいです。15年でも大丈夫・・・)
今回の三越での展覧会は「辻仁成展、鏡花水月」というタイトルになりまして、1,鏡花水月、2,ソラノキモチ、3,ノルマンディ情景、4,記憶のネガ、の4つの大きなシリーズが並びます。もしかすると、これに漏れるものもあるかもしれませんが、最終調整中です。この作品制作は、昨年の夏の三越個展の直前、春から描き始めたので、約1年ほどがかかっています。同時進行で描いているものもありますが、何度かに渡って加筆をしていきますが、油絵具が乾くのに結構な時間がかかりまして(厚塗り薄塗りで時間が異なります)、いくつかの作業場が同時進行で動いている感じです。油絵の場合、付きっ切りというのは、ぼくのようなスタイルの描き方の場合、難しいですね。乾かすことから、始まる、という感じですし、乾くまでの時間がとっても大切なので、アクリルとか、水彩とか、パステルような感じでは描けません。
ちょっと、写真で説明してみましょう。大きな作品の部分的な写真になります。全部をお見せしたいのですが、個展での楽しみにとっておいてくださいね。


これは、厚塗りなので、表面が乾くまでにひと月くらいかかって、それから何層も重ねていくので、こういう感じになります。(シリーズ、鏡花水月より)

これは、薄塗りなので、厚塗りよりは時間が短いですが、表面が乾くのに、2週間は必要で、そこから、やはり、幾層も重ねていきます。珍しく、今回は、筆を駆使しております。ノルマンディの空って、本当に美しいんですよ。それに複雑な表情を持っているので、描くのが楽しいですね。(シリーズ、ソラノキモチより)

こちらはオイルを混ぜて、さらに薄めて描いたものです。(シリーズ、記憶のネガより)

こちらは、上と同じ手法ですが、重力を使って、描いていますので、イメージした形に落とし込むまでにものすごい時間を必要とします。細かい手法内容については、超・秘密です。
そして、パリのアートフェアは、コンコルド広場で行われるもので、他の画家さんたちに交じって、展示されます。ぼくに与えられたブースの壁は、6メートルだそうです。この時期は、パリ中、アートフェアだらけなので、世界中から、絵を求めに来る方々が対象になりますね。未知数の方々に向けて描くので、ま、いつも通りでしょうか、笑、出来る限りのことをやる感じです。すでに、少しずつ、創作をはじめています。去年の暮からこのアートフェアの打診はあったので、心の準備は出来ておりました。ソラノキモチをベースにしたカラフルな作品が並ぶんじゃないか、と想像しています。
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リヨンは個展なので、パリとの差別化を狙って、ここ最近、はまっている、パステル画、版画、を中心に展示する予定です。こちらは、パリの夜の、たとえば、セーヌ河畔とか、サンジェルマンでプレ界隈とか、自分の歴史、25年、を振り返るような作品が中心になります。すでに、数枚出来ていますが、綺麗ですよー。笑。油絵のように1年もかかることはないです。パステルだと、頑張れば、4,5日で出来るかな、と思います。水彩とか、木炭画に近いかもしれないですが、小さい作品が中心になるので、あまり、時間はかからないかもしれないですね。かわいい世界ですよ、いつか、日本でも、画廊などでやりたい、ですね。
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こういうのを、年間通して、ぼんやりと計画しながら、アトリエを上ったり下りたりしながら、作業しています。屋根裏でパステル、ガレージで油絵という感じなんです。日本はデパートがメインなので、まだ、画廊ではあまりやったことがないです。フランスでは画廊が中心で、今回、アートフェアがはじめての挑戦になります。さて、どんな感じになるでしょうね。どこでだろう、とこちらのスタンスに変わりはございません。
そして、ぼくが描いている横には、必ず、三四郎がいます。疲れると、さんちゃんを連れて森や海に散歩に出かけ、そこで軽くスケッチをしたり、写真をとって、創作のヒントにしています。ノルマンディ、パリでの光景がだいたい、ヒントになっているんですよ。100年後、ノルマンディには辻仁成がいた、と記憶されるような作家になりたい~、えへへ。なんちゃって。






