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第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる! Posted on 2018/11/08 辻 仁成 作家 パリ

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

 
■作品テーマ:「古きものを新しく」
■審査会場:「WeBase 鎌倉」
■審査会日:2018年10月30日(火)
 
第2回アート&デザイン新世代賞は今年も無事に若い才能の発掘という使命を全うすることが出来ました。第1回よりも応募数は減りましたが、しかし内容の濃い作品がより多く集まりスタッフ一同を発奮させました。
アートとデザインを広く包括するこの若い世代のための賞は、才能を限定しがちな大人のための賞とは異なり、粗削りでもチャンスや可能性を秘めた若者を掬い上げる賞として昨年からスタートし、前年の最優秀賞、京都造形芸術大学の中村暖君は現在ロンドンへ留学、大きな結果を残すことに成功しています。(中村君をパリで独占取材した記事は近日配信を予定)その中村君に続くような世界を目指す若者を支援するのが新世代賞の狙いの一つでもあります。今年もこの趣旨に賛同してくれた一般社団法人日本ワーキング・ホリデー協会、東京トラベルパートナーズ株式会社から海外留学の支援を得ることが出来ました。
 

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

 
今年度の審査員は現在もっとも話題の日本人建築家田根剛氏、そしてアートの世界のつねに台風であり続けるChim↑Pomのエリイ氏と卯城竜太氏の二人に加え、今年から経営者の視点からアートやデザインの可能性を探るために株式会社レーサムの飯塚達也氏にご参加いただきました。飯塚氏の経営者からの審査視点は単なるアーティスト側からの評価に終わりがちなこの手の賞に一石を投じています。経営者的なアドバイスがアートとデザインの可能性に今年は新しい光りを注ぎました。
 

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

 
審査会は、10月30日(火)の午後一時より鎌倉由比ガ浜のホステル「WeBase 鎌倉」大会議場にて、審査員の芸術家集団Chim↑Pomのエリイ氏、卯城竜太氏、飯塚達也氏(株式会社レーサム 代表取締役副社長)、そして編集長の辻仁成の四人が最終候補に残った66作品の厳選な審査に挑みました。建築家の田根剛氏はパリでのふろしきプロジェクト展開催と時期が重なり残念ながら欠席されましたが、前もって審査をして頂き、当日の昼、12時に全作品の点数を書き込んで頂いたシートがパリより届きました。一度目の審査で決着がつかなかったので議論を重ね、二度目の審査へと持ち越されました。最終的にそれぞれの審査員が激論を重ね、6時間近い審査時間を有して、以下の方々が受賞されることに決まりました。

まず、最優秀賞(賞金50万円+海外研修)に選ばれたのは熊本県・熊本大学大学院・自然科学教育部・土木建築専攻修士1年の、立花 和弥さん(23才)の“見慣れた景色 見慣れない風景”です。
熊本大地震により崩落した山脈の岩肌に残る無残な爪痕を教訓と希望とし未来に百年輝かし続け残すという壮大なアイデアでした。蓄光塗料を崩落岩石に塗り、震災後の山肌に天の川のような輝く未来を浮き上がらせるというプログラミングでした。
■最優秀賞■
「見慣れた景色 見慣れない風景」 立花 和弥さん(23才)
 

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

 
次に優秀賞(賞金30万円)は富山県・富山市富山ガラス造形研究所・研究科1年の、鑛納 未來さん(21才)の“祖母とこれからも”です。祖母がくれたワンピースの柄を使い、研究所で学んでいるガラス工芸の技術で蘇らせた作品です。ガラスの小皿を重ねると祖母への思いが懐かしくも複雑なイメージとして浮かび上がり、記憶と家族を結びます。
■優秀賞■
「祖母とこれからも」 鑛納 未來さん(21才)

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

 
特別賞(賞金10万円)は奈良県のフードクリエイターでエッセイストの西塔 藍さん(21才)の“ハジマリの青”という文章だけの作品です。この作品は半紙に青いペンで殴り書きされた自身のこれまでの半生とこれからの展望を熱く記すという一見、私小説風のエッセイもしくは詩のような風変わりな作品でしたが多くの審査員の心を射抜き高い評価を得ました。
■特別賞■
「ハジマリの青」 西塔 藍さん(21才)

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

 
このほかに、受賞3作品には及びませんでしたが、あと一歩という作品が入選作として選ばれました。
入選作は以下の通りです。

■入選作■

「美しさと思いを込めて」
氏名:湊 萌子さん(17才)
分類:ファッション「靴」 
経歴:神奈川県・神奈川県立大磯高等学校・普通科在学中

「マチがひのめを見る」
グループ名:竹田Tキャンプ実行委員会ひのめ事プロジェクト(グループ)/代表者:菖蒲 薫さん(20才)他8名
分類:プロダクト
経歴:京都府・京都工芸繊維大学工芸科学部・造形科学域デザイン建築学過程・建築専攻2年 

「Binaryless」
氏名:石黒 健一さん(32才)
分類:立体アート、彫刻、インスタレーション
経歴:京都府・京都造形芸術大学大学院・芸術研究科芸術専攻・グローバルゼミ  

「瓦礫に座る」
氏名:田中 湧二郎さん(25才)
分類:家具、スツール
経歴:東京都・武蔵野美術大学・空間演出デザイン学科

「Culture & Life」
グループ名:アートチームTODOKA(グループ)/ 代表者:轟 颯馬さん(24才)他1名
分類:立体アート、工芸作品
経歴:神奈川県・横浜国立大学教育学研究科・教育デザインコース・美術領域専攻2年

「HIKITE」
氏名:野上 萌さん(23才)
分類:プロダクト、iPhoneケース 
経歴:岐阜県・情報科学芸術大学院大学・メディア表現学科

「Graffiti Books ―落書きを許容する本―」
グループ名:Village Architects(グループ)/ 代表者:木村 太亮さん(23才)他1名
分類:プロダクト、本、電子ペーパー
経歴:東京都・東京大学大学院・修士課程・工学系研究科・建築学専攻1年
 

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

 
どの作品も甲乙つけがたいユニークで内容の濃い作品ばかりでした。まだまだ2回目の新世代賞ですが、25才以下の若者たちの中に大きな才能が眠っていることを審査員、スタッフ一同実感することが出来ました。審査会の後、審査員たちとの夕食会では熱冷めやらぬ審査員たちの熱弁が続きました。多くの若い人たちの参加に感謝をいたします。第3回へ向けて今後も新世代賞事務局はがんばっていく所存です。年内に審査員による選評、受賞者のメッセージを記事化し発表いたします。また年明けには入選作までの10作品の巡回展を全国で実施したいと思います。そして、その前にはどこかで授賞式などを行いたいと思いますので、決まり次第、お知らせいたします。
 

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

 
アートやデザインをあらゆる方向から検証し、新しい才能を発掘&応援することがこの新世代賞の使命だとスタッフ一同は思っております。第3回新世代賞はさらに多くの若者の可能性を発掘するため、全力を尽くしたいと思います。第3回新世代賞へ向けて応援、そして協力してくださる学校、大学も募集しております。ぜひ、この趣旨に賛同されました学校関係者の皆さま、ご連絡をお待ちしております。

 新世代賞審査員長 辻仁成

 

第2回アート&デザイン新世代賞、受賞決まる!

撮影:渡邉 和弘

 
皆さま、たくさんのご応募ありがとうございました。

 
 

posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。