日々のことば
自分流・日々のことば「老けない老い方」 Posted on 2025/05/29 辻 仁成 作家 パリ
おつかされまです。
ここでは「人生はコツコツ」ということをよく語っておりますが、ぼくも65歳になったので、ある意味で、高齢者、と言える身分になりました。
ありがとうございます。
つい最近までロックンロールに純文学に映画撮影をしたり、人生を果敢に駆け抜けておりましたので、実年齢を知って、さきほど、ひっくり返りそうになったわけです。
もう65歳なの?
50歳になった日、「ああ、もう歳だ~」と落ち込んだばかりっだったものですから、明らかな数字を提示されると、さすがに、驚きますよね。
やれやれ、人生というものは、光陰矢の如し、ですな。
ちっとも老けた気にならないので、今日も某女性週刊誌様から「若さの秘訣」をエッセイにしてください、と依頼がありました。
忙しいので、お引き受けできませんでしたが、笑、秘訣がもしもあるならば、なんでしょうか・・・。
ぼくはあまり実年齢を考えることがないからかもしれないですし、ぼくが腕時計をしないのは有名な話で、だから、腕時計の広告文依頼だけはいただいた試しがありません。
時間というのは人それぞれですから、年齢も人それぞれで、こういう65歳があっても、別にいいんじゃないか、と、逆に、ぼくは自分の年齢を隠さず、生きているわけです。
いえ、逆に栄誉なことですよ、65歳!
☆
ただ、とっても大事にしていることがあります。
それは、65歳などという尺を考えない、ということです。老けたな、とか、思わないこと。
75歳になっても、きっと、まだ道半ば、と思い続けていることでしょう。
まだ「半ば」と思って気を緩めないことが肝心なのであります。
「百里を行く者は九十里を半ばとす」
ということわざがありますね。ご存じですか?
「戦国策」という古い書物に書かれていたことばです。
人間というものは、勝負でも人生でも生き様でも、ゴールが近づいてきますと、なんか、偉そうになって、つい慣れっこになるというのか、油断をするというか、気を抜くというか、自惚れるというか、自分は経験があると思い込むというか、ふんぞり返って、すべって、ころん、となっちゃうことがあるんです。
これを、失敗、といいます。
なので、ゴールが見えていようと、いまいと、爺さんになっていても、婆さんになっていようと、まだまだ、半ばじゃ、と思って、気を引き締めて生きることが大事、だという教えですね。
いい教えだと思いませんか?
若さの秘訣か、わかりませんが、ぼくはいつもこの戒めは正しいと思って、自分が評価を受けた時こそ、一からやり直し、と思って次を目指すようにしております。
つまり、百里の長い道のりですが、九十里でも、やっと半分たどり着いたね、と思うくらいが、ちょうどいい、ということです。
そう思えば、百二十里くらい、行けちゃうかもしれない。
常に、新しいページを捲ることが、老けない道なんですね。
老けるというのは、老いるじゃなく、気を抜くということ。
油断大敵ですな。あはは。
はい、今日も精一杯生きてみましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「百里を行く者は九十里を半ばとす」
大切なお知らせ。
・辻仁成の個展開催
7月9日から、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーで、出没するかもしれません、
7月23日から、岡山天満屋本店美術画廊にて、出没するかも、
10月13日から、パリ、マレ地区にある画廊、20THORIGNYで2週間、開催いたします。出没しますよ!
・日々のことばを、生放送ラジオで、ツジビルは毎月3回、5の付く日にオンエアー中。
☟
※ パリの個展、毎年、やっています。2027年も、決定しました!おめでとう!
posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。