日々のことば

自分流・日々のことば「方円の器」 Posted on 2025/06/05 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
今の自分を本当の姿が見える魔法の鏡にうつしてみたとしたら、どう見えるでしょうね。
ぼくは自分が幸せなのか、そうじゃないのか、よくわからないのです。ま、いろいろ大変なことがありますから、大きな声で「幸福です」とは言えないのは間違いありません。
でも、好きなことをやって生きているので、そして、これ以上はもう欲張ってもしょうがない、と悟ったので、そういう意味では、前ほど、苦しくはなくなってまいりました。
「足るを知る者は富む」
ということわざからすると、もう、十分、足りていると思っているので、欲張ってもしょうがないかな、とは思って現状をひしと受け入れております。
「足るを知る者は富む」
は、欲張らないで現状に満足できるものは、豊かだ、という教えですね。
ま、その通りかもしれません。

ただ、人間というのは、水と似ており、器の形で、けっこう、どうにでも変化するというか、器次第で、幸不幸が変化する生き物だと思います。
今の自分が安定した水だとするならば、そういう器に入っているということでしょう。

自分流・日々のことば「方円の器」



中国の戦国時代のことばに、
「水は方円の器に従う」
というのがあります。
水って、コップの形にあわせて、円筒にも四角にも変化するよ、ということです。
つまり、社会性、環境とか、友人関係、恋人とか、そういうもので良くも悪くも変化しがちだ、という意味になります。
「善悪は友による」
と同じ意味ですが、もうちょっと広い意味を含んでいます。
方円の器とは、四角やまるい容器のことで、社会、人間関係を表しています。
自分の、今の周囲を見回してみてください。
あるいは、変化した友人の周辺の人を眺めてみましょう。
その人が、どういう状況にあるのか、そこで察しが付くわけです。
世界は方円の器なので、人間は、自分がいる世界にあわせて生きているということになります。
鏡に映る自分が苦しそうであれば、その器が、きついのかもしれませんね。
逆に、いつも笑顔でいる友人がいるならば、その人物は、大らかな器の中にいるからかもしれません。
朱に交われば赤くなるように、人間は世界の影響をものすごく受けやすいのです。
自分は今、どうだろう、と心の鏡を覗き込んでみることも、時には必要かもしれません。
成長って、そこに気が付く時に、加速します。
人間関係、ものすごく大事ですよね。
疲れたら、心が落ち着く人に会いに行きましょう。
さ、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「水は方円の器に従う」

自分流・日々のことば「方円の器」



自分流×帝京大学

大切なお知らせになります。
・辻仁成の個展開催
7月9日から、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーで、※ 初日、7月9日だけ、混雑をさけるために、入場抽選があります。それに関して、以下のURLからご確認ください。
また、10日以降は、入場整理券は不要ですが、会場混雑緩和のために入場制限をさせていただく場合がございます、と画廊さんからご連絡頂きました。2週間ありますから、のんびり、ご来場ください。

https://www.mistore.jp/store/nihombashi/shops/art/art/shopnews_list/shopnews0696.html

7月23日から、岡山天満屋本店美術画廊にて。
10月13日から、パリ、マレ地区にある画廊、20THORIGNYで2週間、開催いたします。出没しますよ!
・日々のことばを、生放送ラジオで、ツジビルは毎月3回、5の付く日にオンエアー中。

TSUJI VILLE

自分流・日々のことば「方円の器」



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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。