日々のことば

自分流・日々のことば「怒りの先」 Posted on 2025/06/09 辻 仁成 作家 パリ

おつかされまです。
腹が立ちますね。腹が立ちます。
いったい、どうしたらいいものか、と頭にくるたびに悩むのです。怒鳴り散らしてもいいんですが、いい言葉があります。
「怒りは敵と思え」
です。
これ、徳川家康のことばなんですよ。
「いいかね、頭がきて、怒りに任せて感情的になるだろ、すると、人間というものは冷静な判断ができなくなるんじゃ」
さすが、徳川家康公ですな。
「その上、勢いで怒りを相手にぶつけるだろ、すると、それ以上の怒りや恨みを招くことになるんじゃ。怒りというものが実は自分の一番の敵だと思って鎮めないとならないのじゃ」
どう言ったかはわかりませんが、そういうことのようです。
ぼくも時に感情的になって、冷静さを失い、怒りにまかせて、吐き出してしまうことが多々ありますが、最終的にその案件、尾を引くことになって、いつまでもすっきりせず、ぎくしゃくを抱えて生きなければならなくなったことがありました。
「あの時、ちょっと冷静になっておけばよかったかな」
ま、若気の至りというものもあるので、それはそれでしょうがないですが、ある程度の年齢になると、「怒り直結」で生きていては身が持ちませんし、人間関係をダメにしますね。
言うべきことは言わないとなりませんが、ちょっと冷静になってから、言うのがいいでしょう。
そういう時に、さらに、いい言葉があるんです。

自分流・日々のことば「怒りの先」



誰が言ったことばかわかりませんが、
「言いたいことは明日言え」
というものです。
つまり、怒ったその瞬間、冷静さを欠いたまま怒りをぶつけてしまうと、失言のせいで取り返しがつかなくなるから、その前に、一晩考えてから、本当に言いたいことがあるなら、明日言いなさい、という教えなんですね。
「腹の立つことは明日言え」
という言い方もありますね。
言いたいことって、いろいろとあるじゃないですか、でも、それを思ったその瞬間に言わないで、一晩寝かせてから言うと、言い方、口調もマイルドになり、さらには、言うべきことが十分にまとまり、よく伝わることもあるわけです。
つまり、感情的になって爆発するのは損だよ、ということ。
ありますよね、あるあるですね。

でも、最近、ようやく、怒りを一度飲み込んで、一呼吸おいてから、その感情を自分でよいか悪いか判断することが出来るようになってきました。
これの利点は、無駄な敵を作らないですむ、ということ。
すなわち、世の中というものは、完全じゃないので、くだらないことを言うやつだらけだから、いちいち相手にしない方がいいよ、ということなんです。
だって、不条理だらけのこの世界、すべての不条理に怒っていたら、一生が台無しになってしまう。冷静になることも一つの方法なんですね。
「くだらんな」
とある時から、そういうものを切り捨てることが出来るようになってきました。
怒りに任せ、そこから発生したもめ事で苦しむより、くだらんな、と切り捨てて、明るい未来向かうのが、ベストじゃないですか?
無駄なことに翻弄されることくらいくだらないことはありませんからね。
はい、深呼吸、空を見上げて、堂々と今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「怒りは敵と思え」

自分流×帝京大学

自分流・日々のことば「怒りの先」



自分流・日々のことば「怒りの先」

お知らせです。
web版の辻仁成美術館が開館しましたよ。
下のURLをクリックください。画質的には、パソコンで入場していただくと、より美しい映像をお愉しみいただけます。

https://tsuji-art.com/

展覧会のお知らせ。
・辻仁成の個展開催
7月9日から、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーで、※ 初日、7月9日だけ、混雑をさけるために、入場抽選があります。それに関して、以下のURLからご確認ください。


https://www.mistore.jp/store/nihombashi/shops/art/art/shopnews_list/shopnews0696.html

7月23日から、岡山天満屋本店美術画廊にて。
10月13日から、パリ、マレ地区にある画廊、20THORIGNYで2週間、開催いたします。出没しますよ!
・日々のことばを、生放送ラジオで、ツジビルは毎月3回、5の付く日にオンエアー中。

TSUJI VILLE

自分流・日々のことば「怒りの先」



自分流・日々のことば「怒りの先」

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。