日々のことば
自分流・日々のことば「三番手」 Posted on 2025/06/18 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
日々は流れておりますね。
時代はつねに移り変わっていくものです。
今日、有名な人がいたとしても、来年には消えていることもあります。
逆に、今日無名でも、一年後にはものすごい成功をおさめているかもしれない、ということです。
人の世の流れが大昔から激流であったことを古い故事から学ぶことが出来ます。
たとえば、
「昨日の淵は今日の瀬」
ということばがあります。
昨日までものすごく深く静かに流れていた川の淵が、今日はものすごく早い流れ(川の瀬)になっている、というような意味です。
似たようなことばに、
昨日の花は今日の塵、だとか、昨日の娘今日の婆、というひどいのまでこの手のことばがたくさんあります。
古今集の時代から、人の変遷について、こんな風に語り継がれてきたわけです。
☆
変遷といいますが、時の流れとともに変化することを表す言葉です。
「変遷をたどる」とは、その変化を追って、どういう風に移りかわってきたか、物事の変化を確かめていく、ということです。
ぼくらはどんな風に世の中が変化しているのかを、見極めて、こうやって、生き抜いていますよね。
「渡る世間に鬼はない」
だといいのですが・・・。
さて、流行といいますが、ぼくらが見ているこの世界も、昨日、今日、明日ですごく変化をしています。
特に人の浮き沈みというのは早いものです。
で、長く世の中を見ておりますと、つねに三番手あたりにつけている人っていうのは、なかなか消えませんね。
一番手になる人は、足を引っ張られたり、飽きられたり、流れの矢面に立って、消え去る運命が多いように思いますが、三番手とか、四番手あたりにつけているものは意外としぶとく、残り続けていたりしますよね。
あれは実に不思議です。
ずっといるな~っていうしぶとい人のことです。笑。
マイペースで流行に流されないというのか、常に時代のちょっと奥にいるというのか、目立たずに着実にやっているというのか、出しゃばらないのにつねに三番手にいるというのか、もう、絶妙な生き方です。笑。
時代が変わっても、つねに、残り続けているある種の人たちに共通しているのは、はやりすたれに無縁で、自分流のスタイルを追求している人たちだったりするんじゃないでしょうか。
小説家でも、ミュージシャンでも、経営者でも、政治家でも、常に時代のある位置を死守し続けている人って、流行を寄せ付けない何かがあります。独自のスタンスというのか、・・・。
トップを目指すことだけがいいわけじゃない、ということを、そういう人たちから学ぶことが出来ますよね。
欲を出し過ぎず、マイペースで、日々を着実に生きる、に限ります。
ま、でも、ま、でも、・・・三番手っていうのも、目指してなれるものじゃなく、ですね、ご苦労様です。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「ひたすらわが道を行く時、その道続く」
今日のごはん。
「やきそば」
・辻仁成の個展情報です。
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7月9日から、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーで、2週間開催されます。詳細は、三越のHPでご確認ください。
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7月23日から、岡山天満屋本店美術画廊にて、開催。
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10月13日から、パリ、マレ地区にある画廊、20THORIGNYで2週間、開催いたします。新境地を打ち出します。
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2026年、1月中旬から、パリの日動画廊でも、グループ展に参加させて頂きます。
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・日々のことばを、生放送ラジオで、ツジビルは毎月3回、オンエアー中。詳しくはこちらから、どうぞ~。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。