日々のことば
自分流・日々のことば「急がない急ぎ方」 Posted on 2025/06/19 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
ぼくはせっかちなんです。
ご存じかと思いますが、ぼくをよく知らない方に申しあげておきますとですね、ぼくはとにかく短気なんですわ。
これで大失敗をしたこともままあります。
もう少し考えてから行動しておけばこんな失敗はしなかったのじゃないか、と思う出来事が多々ありました。
でも、せっかちが悪いともいいきれないことがありまして、せっかちが仕事の上で強みになったこともこれまた、多々あるんです。
せっかちというのは、いいように解釈するならば、ようは、決断力があり、行動力もあり、まずは身体が先に動いてしまうわけですから、時間の使い方もまあ上手なのです。あはは。
でも、問題は行動が先に出てしまうので、人よりも早く行動をしてしまうがゆえに、慎重さに欠け、熟慮が足りず、予想を見誤る可能性も高いだけじゃなく、急いでやった粗さが裏目にでて失敗するケースも、多々、あるということです。
ことわざに、
「急いては事を仕損じる」
というのがありますね。
でも、その対義語に、
「先んずれば人を制す」
というのもあります。
先にやった方が有利に立てるということばです。
先手必勝とか、早いが勝ち、とか、相手よりも先にやる方が相手を封じ込めることがたやすくなる、という作戦ですね。
つまり、急いては事を仕損じる、というのは、急ぐ時ほど落ち着いて急ぐのが大事ということなんでしょうね。
ぼくは、そう解釈しています。
ただ、ぼくも長く生きてまいりましたので、その、失敗を繰り返した結果、気が付いた大事な志があります。
それは、急がば回れ、という哲学です。
もはや、これはことわざのレベルを超えて、この戒めは、哲学に到達しておりますね。
これまでの経験から、本当に急いでいるのであれば、近道を通らないことが大事だ、ということに気が付くことが出来ました。
というのは、急いで近道的な仕事をやっつけると、やはりどうしても粗雑になり、結局、あとで気に入らず、頭からやり直さないとならない羽目に陥ったことが何度かあったからです。
本当の近道というのは、実は、着実に歩める遠回りなのかもしれません。
なので、せっかちなぼくは、急いでいるな、と思う時にこそ、速度を落とすよう、心がけているというわけです。
小説でも、絵でも、あらゆる創作に当てはまることですが、急いで書き上げてしまう、たとえば小説とかだと、致命的な構造上のミスをやりがちで、それを頭から戻って全部直す場合、途方もない時間を要さないとならなくなるわけで、・・・いい作品というのは、やはり、何度も何度も推敲を重ね、丁寧に丁寧に仕上げたものだったりするわけです。ですね・・・。
これは、創作に限らず、あらゆる物事に当てはまるのでした。
ただ、せっかちだからこそ、何度も失敗をしてきた中で、ぼくは、だんだんと自分の方法を見出すことも出来るようになってまいりました。
それを、経験と余裕、とぼくは呼んでいます。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「急がば回れ」
今日のごはん。
「冷やし納豆梅そうめん」
横に添えてあるのは、冷凍しておいた鶏ごぼうごはんで作った握り飯です。キュウリのおしんこも作りました。塩昆布で、笑。
個展なんですが、3週間後くらいに迫ってきました。
ま、2週間も会期があるので、慌てないでください。7月21日まで東京では個展開催していますし、岡山でも、28日までやっていますので、・・・。
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7月9日から、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーで、2週間開催されます。初日9日だけ入場制限があります。23日まで抽選受け付けているようです。三越さんにお問い合わせください。
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7月23日から、岡山天満屋本店美術画廊にて、開催。初日だけ、整理券が出るようです。天満屋さんにお問い合わせください。
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10月13日から、パリ、マレ地区にある画廊、20THORIGNYで2週間、開催いたします。新境地を打ち出します。
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2026年、1月中旬から、パリの日動画廊でも、グループ展に参加させて頂きます。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。