日々のことば
自分流・日々のことば「今日は」 Posted on 2025/06/30 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
今日は打ち合わせがあり、パリで人に会ったりしていたのですが、珍しいことに日本人カップルの方に、すれ違いざま、
「こんにちは」
と言われたのです。
最近のパリで、円安もあるのでしょうか、日本人の方と会うことが少なくなっておりましたし、こんにちは、といきなり言われるとは思っていませんでしたので、すいません、身構えておりませんでした。笑。
なので、一秒遅れての、こんにちは、という返事になってしまったわけです。
申し訳ありませんでしたが、久々に、「こんにちは」が聞けて、大変うれしゅうございました。
日本人ですからね、こんにちは、と言われると、精神が、しゅっとします。そのあと、幸せが押し寄せてきます。
「こんにちは」を漢字にしますと「今日は」となります。
これは「今日はご機嫌いかがですか?」ということばが、短くなり、こんにちは、となったのだそうです。
もともとは「今日は」なんですね。
「こんにちわ」ではなく、「こんにちは」が正しいのは、こういう理由からです。
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フランスでは、見ず知らずの人にも「ボンジュール」というのが割と普通で、たとえば、誰かにものを訊ねる時に、いきなり要件から言ってしまうと、
「ボンジュールだよ、まずは、ボンジュールからでしょ」
と窘められます。
せっかちなぼくは、過去に1,2度、言われたことがあります。
ちなみに、ぼくは朝、ランニングをしておりますが、すれ違う人全員に、ボンジュール、といいました。笑。
98%の人から、ボンジュールが戻ってきますよ。え? 2%は? いいじゃないですか、人見知りの人も走っているんですから・・・。
フランスの場合、知人に「ボンジュール」を言う時は、やはり、そのあとに、”ça va”(サヴァ、元気?)とか”Vous allez bien ? (ヴザレビヤン、お元気ですか?)と続けます。
日本語の「こんにちは」には、ここまでの意味が含まれている、というわけですよ。
すごく、便利であり、優しさを感じる言葉ですね。
今日、あなたはいかがなのですか、と気遣ってくれている、大変すばらしい表現ですよね。
ちなみに、こんにちは、を「こんにちわ」と書く人がいます。
日本語としての正解はもちろん「こんにちは」なんですが、「こんにちわ」の「わ」は「和」から来ている、という説もあり、それを好んで使う人もいます。☜ぼく。えへへ。
「今日和む」ということになり、個人的には、この響きも好きなのですよ。
「今日は和んでいますか?」
日本といえば「和」を連想するので、こんにちわ、の響きに、なごむこともありますね。
日曜日でしたからね、カップルに戻した「こんにちは」は、実は「こんにちわ」だったのです。
「今日は、お元気ですか?」
「ええ、今日和んでおりますよ」
という具合です。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「こんにちは」
今日のごはん。
「鯛のグリルと魚醤炒飯」
個展のお知らせ。
「Le Visiteur」展、
東京、7月9日から21日まで、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーにて。
岡山、7月23日から28日まで、岡山天満屋本店、美術画廊にて。
パリ、10月13日から26日まで、パリ、GALERIE20THORIGNYにて。
問い合わせは、各画廊へお願いします。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。