日々のことば

日々のことば「腹」 Posted on 2025/07/05 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
もうすぐ個展ですから、日本の皆さんとお会いできるので、ここひと月、体重計の協力をえまして、減量大作戦をやってまいりました。
人間という生き物は甘やかせば、甘やかすだけ、太る生き物なのです。
ぼくも60キロを超えてしまい、これはいかんとベスト体重である56キロを目指して、このひと月は厳格な食事制限に取り組んでまいりました。
あまり、背が高くないものですから、ちょっと油断をして、飲んだり食べたりしますと、一気に太ってしまい、とっちゃん坊やまるだしになってしまうわけです。

「まーでも、ちょっとくらいいいでしょ。このケーキだけは別腹だから」
と、こういう安易なことばこそ、非常に危険なのであります。
「別腹」
こんな毒素満載のことば、誰が考案したのでしょうか?
腹は本来一つなのに、甘いものを食べる胃袋だけ、もう一つあるような錯覚と申しますか、この幻想が、ダイエットにとってどれだけ敵か、みなさん、よくご承知であろうか、と思います。
そこで、今日は、ダイエットに響く最強のことばをお届けさせてください。はい!
「今日の別腹、明日の横腹」

辻仁成 Art Gallery

日々のことば「腹」



笑っている場合じゃ、ございません。
昔、行きつけの居酒屋の女将に言われた尊いことばなのでありました。
しかし、このことばは、まことに真実であり、このことばを無視した人間が翌日から、どれだけ後悔をし、どれだけ苦しい日々に舞い戻るのか、ご想像してみてください。
今、目の前にある誘惑に負けてしまえば、明日、そのカロリーが横の腹を太らせてしまうのも確実なのですから・・・・。
恐ろしいはなしです。

ぼくは先月、開始したダイエットに成功をし、今日現在、体重は57キロジャストまで下がりました。
実に4,5キロも落としたことになります。(リバウンドを繰り返しながら、次第に、安定してきました)
個展の初日、7月9日まであと数日ありますので、この体重の維持につとめたいと思うのです。
減量の効果が出ている時というのは、空腹を強く感じている、時でもあります。
これは、減量だけじゃなく、人生のすべてのトライに通じます。
一生懸命時間を惜しんで勉強をしている時、人間の脳は活気づいている、というわけです。
トライしている最中は、苦しい時間ですが、よく考えてみてください。この苦しい時間にこそ、あなたの脂肪は分解されている、わけです。
つまり、同時に、それは成果が出てきた証拠でもわけです。
なのでぼくは、
「今が一番苦しい時、しかし、今が一番効果が出ている時」
と呟いて日々を乗り越えております。
冷凍庫の中のアイスクリームに何度と手を伸ばしながらも、
「今日の別腹、明日の横腹」
と念仏を唱えているのであります。
やれやれ・・・。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「今日の別腹、明日の横腹」

自分流×帝京大学

日々のことば「腹」



日々のことば「腹」

今日のごはん。
「ポンレベック・チーズ」

日々のことば「腹」

ええと、7月9日、三越開店と同時にぼくの今年の日本での個展が開幕します。会期は2週間です。ぼくは、近くに滞在しているので、時間をみつけて、顔を出したいとは思っています。日本橋を満喫しながら・・・。すれ違ったら、えいえいおー、と熱い声援お願いします。がんばります。こういう個展って、その作品とは、もう二度と、作者であるぼくも観れなくなる可能性があるわけで、この機会に、2025年の辻父ちゃんの作品群をぜひ、じかに、御覧くださいませ。なにせ、無料で、観れますので・・・。笑。

7月23日から、岡山の天満屋画廊でも、個展、開催いたします。東京と岡山、作品が異なります。

10月13日から、パリで個展が始まります。また、お知らせします、いつか。

そして、毎月3回やっているラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。

TSUJI VILLE



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。