自分流・日々のことば

自分流・日々のことば「恨まない」 Posted on 2025/07/08 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
生きていると、どうしても許せない人間っていますよね。
どうしても許せない、と思うと苦しくないですか?
ぼくも何人かいます。
けっこう、過去にとらわれずに生きている方だと思うのですが、やっぱり、過去のバカにされたこととか、思い出すと腹も立つわけです。
ぼくは、
「許さなくてもいいから、忘れましょう」
と自分に言いきかせるようにして、バカにされた記憶を薄めております。

先日、男に恨みを持った知人の女性がやってきたので、そう言って説得してあげました。
なんでも、浮気をされて、最後に捨てられたのだそうです。ものを使い捨てるような感じで、ぽい、と・・・。
「しかし、恨むなんて、身体に悪いからやめなさい」
と、言いましたよ。
それでも、その人はもう憎しみの塊で、なかなか、怒りが収まらない感じだったのです。
「じゃあ、許さないでもいいけれど、自分のために忘れなさいよ。いつまでもそういうものを抱えているということは、その人にいまだに支配されているということになる。あほらしい、と思ってさっさと次の世界に行く方がいいんじゃないですか?」
長く説得をした結果、やっと噴火していた火山が下火になったのです。
「そうね、辻さんの言う通りです。未来を見る方がいいわ」
ま、ほんとうに、そう思います。

辻仁成 Art Gallery

自分流・日々のことば「恨まない」



昔のことわざに、こういうのがあります。
「人を呪わば穴二つ」
どういう意味かと申しますと、
相手に呪いをかけて殺そうとすると、最終的にその呪いの反動というか、呪いとはそういうものじゃないですか、邪気を使えば邪気が戻って来るというわけですから、最後には呪った自分も殺されるんだよ、だから、墓穴が二つ必要になる、ということばなのです。
なんとなく、わかります。
人を呪う。何か、殺してやりたい、と思う邪気って、結局、自分や自分の大切な人に戻ってくるような気がしません?
呪いというものは、そういうものなんです。だって、呪いだから・・・。
そういう邪気を使っちゃいけないんですよ。
怒りがあるなら、それは持っていても構いません。
相手を許す必要なんかないです。
ただ、恨みだとか、呪いだとか、悪口だとか、邪気だとか、飛ばさない方が身のためだよ、という教えなんですね。
「人を呪わば穴二つ」
あー、こわっ。
そういうところに向かわず、青空をみあげて、さわやかな世界へと旅立ってください。
一生をどう生きるかは、あなた次第です。
恨みなんて、ろくなものじゃない。
きっぱり捨て去って、新しい出会いを探してください、とぼくはその人に言いました。ですね。
82億人も人間はいるんだ。たった一人に振り回され、大事な人生をもっとひどくする必要もないでしょう。
清く美しく。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「人を呪わば穴二つ」

自分流×帝京大学

今日のごはん。
「コンビニのラーメン」

自分流・日々のことば「恨まない」



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TSUJI VILLE

自分流・日々のことば「恨まない」



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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。