日々のことば

日々のことば「分別」 Posted on 2025/07/12 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
なんですかね、いろいろと嫌なことがおこりますよね。
東京に入って、飲み歩いているんですが、ぼくはふらっと見ず知らずのワインバーとかに飛び入りするのが好きで、カウンターとかでみんなと仲良くなり、ラインの交換ともけっこう、普通にやっちゃいます。
東京に入って、酒場で意気投合した人、かなりいるみたいで、今朝、起きたら、知らない人のラインが20件くらい、ありました。自分に驚きますね。笑。
しかし、いい出会いばかりじゃないんです。
みんな酔っぱらっているし、中には、憂さがたまっている人もいるわけで、結構な頻度でからまれます。
気にしない方ですが、しつこく絡まれて大変不愉快な思いをすることもあります。
相手の人も大変な人生を生きているんだな、と寛容になり、お金をおいて(そっと、おいて)、出ることにしますが、昨夜は、それが4軒も続いたので、さすがに・・・。
今夜はおとなしく、ホテルで過ごすことにします。
ロン毛がいけないみたいですね、絡まれやすいんでしょうか。
ぼくも人間ですからね、優しくしてくださいねー。

お酒が入ってなくても、気を使うことはたくさんあります。
頭に来ること、多いです、生きていると・・・。
で、腹も立つし、そのせいで神経がすり減ります。
いつまでも、怒りが収まらないと、悪いことばかり考えてしまうのも、人間というものですよね。
そういう時に、もってこいのまじないがあるんですが、ご存じですか?

日々のことば「分別」

※ 個展に駆けつけてくれたわが友、SUGIZO氏。長いこと、じっと絵を見てくれて、ありがとう。また、ゆっくり話そうね。

辻仁成 Art Gallery

日々のことば「分別」

※ ぼくにとって子供のような作品を引き取ってくださった新しい親のような方々・・・、記念撮影をする、画人辻。

「分別過ぐれば愚に返る」
(ふんべつすぐればぐにかえる)と読みます。
この「分別」とは思慮のことです。
怒りに限らず、ものごとというのは、あまり深く悩んだり考えすぎるのはよくなく、そうすることで人間というのはかえって愚かな結論を導き出すことがあるので、もう考えないでいいんだよ、という教えですね。
愚かな考えに陥る前に、「分別過ぐれば愚に返る」と唱えるのが利口な人間の機転ということになります。
ですから、あまり考えすぎないで、ください。
ぼくも、4軒も絡まれた夜は、きっと自分がそういうオーラだしまくっていて、相手も憂さがたまっていただけだろう、と思うようにしています。
家飲みが平和で最高ですよね。
ラインですが、交換をしても、ほぼ、何も返さないので、ごめんんなさい。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「分別過ぐれば愚に返る」

自分流×帝京大学

今日のごはん。
「これを注文したところでなんか周辺が不穏な感じになり、持っていたお金を席に置いて立った時の、前菜の三種盛(いんげんだけ、食べたの)、で、次のワインバーでは何も頼んでないのに、からまれて、出ました。笑。心入れ替えて、しばらく、飲み歩かないことにしますかね」

日々のことば「分別」


「Le Visiteur」展、
東京、7月9日から21日まで、三越日本橋本店、コンテンポラリーギャラリーにて。
岡山、7月23日から28日まで、岡山天満屋本店、美術画廊にて。
パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて。
問い合わせは、各画廊へお願いします。

そして、毎月3回やっているラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。

TSUJI VILLE



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。