日々のことば
日々のことば「鉄」 Posted on 2025/07/22 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
ぼくは仕事が早いとよく言われます。
ぐずぐずするのが苦手、まぁ、せっかちなんですかね。
依頼された原稿などは、引き受けた場合、その日に書いてしまうことがままあります。
締め切り日があとで重なって、身動きがとれなくなるのを避ける狙いもあります。
そもそも「締め切り」ということばが嫌いな性格なんです。付け狙われているようじゃないですか・・・・。
しかし、誰とはいいませんが、うちのスタッフさんの中には、ともかく、いつまでもやらない人がいるんです。
「え、まだやってないの? 先月頼んだじゃん」
「先生、いまやってますってば」
昔、よく蕎麦屋の小話でありましたね、
「いま、出たところでーす」
みたいな。
蕎麦屋の出前の話にそっくりで、文句の電話が来てから、料理をするみたいな、そういう蕎麦屋さんって、・・・。
これは、人生も一緒なんですよ。
こういう英語のことわざがあります。
Strike while the iron is hot.
日本語に訳しますと、
「鉄は熱いうちに打て」
ということですかね。来ましたねー、笑。
ああ、英語のことわざだったんだ。
そもそも、鉄というのは真っ赤に焼けている時に、ハンマーでたたいて形を整えるんですよ。
あれが、冷めたら、強固に固まっちゃって、ハンマーなんかじゃ、どうにもならない。
だから、何事も、熱意が冷めないうちにやりなさい、という教えです。
やらなければならないことを後回しにしてしまうと、あとで、いろんなことがいっぺんにやって来て、全部、しくじってしまうんですよね。経験ないですか?
ぼくねー、掃除とか、洗濯とか、いつも後回しにしちゃうから、大変な目にあうことが多いので、長谷っちを悪者にするつもりはございません。
しかし、ミーティングとかでみんな熱弁をふるうじゃないですか、そしたら、その熱意がある時に、着手する方が、なお、いいものになるわけですよ。
そういうことを言いますと、うちのスタッフさんなんかは、
「先生、弓は引けば引くほど遠くへ飛ぶんですよ」
なんて、言い返してきます。
やられました。
「鳴かぬなら鳴かせてみせようほととぎす」
失礼いたしました。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「鉄は熱いうちに打て」
今日のごはん。
「子羊の柚子胡椒焼き」
いよいよ、岡山初上陸の父ちゃん画伯であります。
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岡山、7月23日から28日まで、岡山天満屋本店、美術画廊にて。
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて。
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パリ、1月中旬から、日動画廊パリ、でグループ展参加の予定。詳しく決まりましたら、ご報告いたします。
問い合わせは、各画廊へお願いします。
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そして、毎月3回やっているラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。