自分流・日々のことば

日々のことば「続」 Posted on 2025/08/13 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
気が付いたら、もう、約四半世紀もの歳月、ぼくはフランスで生きてしまいました。これはすごいことじゃないですか?
「なのに、どうして仏語がちゃんと喋れないの」と息子に叱られております。あはは。
それはしょうがないとして、フランスにも人生を応援する素晴らしいことばが無限にあるので、その中でも、小生がもっとも口にすることばを一つ、ご紹介いたしましょう。
それは、
「La vie continue」
です。
訳しますと、それでも人生は続く、となります。
人間って、どうしようもない難題、事件、出来事、に襲われるものです。
自分だけはなく、周囲のだれかがそういうものに巻き込まれ、苦しんでいることも、ままあります。
この「La vie continue」はそういう時に、使うことばなんです。
大きなミスをした、人に迷惑をかけた、誰かを傷つけてしまった、事故った、誰か大切な人を失った、そういう時に、フランス人の友人は落ち込むぼくにこう言います。
「辻さん、それでも人生は続くんだよ」
この、ちょっと距離を置いた、どっか突き放したような、他人事のごとき優しさって、わかりますか? 
いらぬ同情とかはしないで、寄り添いながらも、ぼそっと、言うんですよ。
「La vie continue」

日々のことば「続」



一緒に泣いてくれる人もありがたいんですけれど、泣かれてもどうしようもない場合もあります。
なので、フランス人は介入せず、「La vie continue」と穏やかに言うんです。
すると、変な同情が無いから、そうだな、たしかに、とぼくは納得できる、という寸法です。
「明けない夜はない」
ということですが、それをもう少し距離感を持って、言うことばでもあるわけです。
「それでも、人生は続く」
この辻訳には、「それでも」と書かれていますが、もちろん、そういう単語はないんです。でも、シチュエーションによっては、そんな風に言われた、と聞こえてきます。
日々は続く、という当たり前のことが、人間を支えているんだということです。だから、乗り越えていきましょう。
はい、いろいろとありますが、今日も精一杯生きたりましょう。
大丈夫です。

今日のひとこと。
「La vie continue」

日々のことば「続」



今日のごはん。
「マリネ肉のステーキ(冷凍)、ジャガイモのポワレ、アスパラガスのモリーユ茸炒め(冷凍)」
冷凍食品のピカールさん、大好きです!

日々のことば「続」

ノルマンディ、というか、フランスは酷暑で、ボルドーとかは40度越えだそうです。熱帯夜が続いているし、畑仕事もあるので、すっかり日焼けしてしまいました。
笑。

ということで、個展情報です!!!

パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」開催します。

2026年、1月中旬から3月中旬まで、「日動画廊パリ」にて、グループ展に参加します。秋頃に、詳細が決まります。
また、お知らせします。

辻仁成の美術サイトに、三越での写真が掲載されました。カメラマン、大野さんが撮影した、絵と対峙する、ぼくです。

辻仁成 Art Gallery

日々のことば「続」

そして、父ちゃんがみなさんの悩みや質問にこたえるラジオ、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。

TSUJI VILLE

日々のことば「続」



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。