自分流・日々のことば
日々のことば「鴨」 Posted on 2025/08/26 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
苦労の絶えない人生でございますね。
どうやってみなさんは数多の難題をかわして、今日まで生きてこられたのでしょう?
小生などは、毎回、自転車操業というか、その場しのぎというか、無理くりというか、日々をなんとか乗り越えて、生きてきた感じです。
振り返ると、そこは絶壁で、奈落が覗いています。うんざりするくらいの人生のワインディングロードでした。
でも、逆を言えば、こうやってなんとかですが、生きぬくこともできましたし、ささやかながら、家族も頑張って力を合わせております。
よく、あんな大変な時代を潜り抜けてきたものだ、と思い返すたび、冷や汗が出たりもしますが、次々に襲い掛かる新たな現実のせいで、いちいち立ち止まって過去を懐かしがる余裕すらありゃしません。
それが人生というものなのでしょうね。
家の近くに沼があり、そこを泳ぐ水鳥を眺めて、羨ましいな、とため息がこぼれた次第です。
ところで、「鴨の水搔き」ということばがあります。
優雅に浮かんでいるこののんきそうに見える鴨も、水面下では水掻きを絶えず動かしています。
そこからこの慣用句が生まれました。
人知れない苦労が数多あることのたとえです。
涼しい顔をして生きている人でも、みんな人には知られず必死で水掻きで泳いでいるのだ、ということですね。
鴨を見習わないといけないな、と思いました。
どうしてもぼくは、世間に対して、「こんなに頑張っているのに」と訴えがちなんです。
弱いからでしょうか、すぐに、「大変だ、大変だ」と大騒ぎをしています。
でも、世の中にはもっと大変なことがごまんとあるわけです。
少し、かるがもさんたちを真似ないといけません。
まだまだ、人生はこれから、こんなことで弱音を吐いている場合じゃないぞ、と言い聞かせました。
弱気になりがちな年齢ではありますが、人生は一度しかありませんからね、とことん、今は走りぬきたいと思います。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
大丈夫であります。
今日のひとこと。
「鴨の水掻き」
※ 父ちゃんを卒業し、もうすぐ、最高にいかした日本のおじいさん、を目指そうと思っています。
今日のごはん。
「麻婆豆腐ときゅうり甘酢漬け」
きゅうりを塩もみして、甘酢につけただけなんですが、あ、あと、生姜の千切りもいれましたが、そうすると、麻婆豆腐の力強さを緩和させる力があります。日々の丁寧なごはんには、最高の箸休めになります。箸休めってことばも、実に立派なことばでございますね。人生の箸休めに「日々のことば」をどうぞ、ご活用ください。
ふふふ。
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ということで、芸術の秋だからこその、個展情報です!!!
近づいてきましたよ。今は、ここだけが、ぼくの希望です。笑顔でお会いしましょう。
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催します。
今回は、浮世絵にヒントを得た新しいシリーズ、ボタニカルな美しいノルマンディ世界、など、今までにない辻ワールドでおおくりします。全23点の渾身作で行くよ。笑。
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辻仁成の美術サイト、昨日、更新されました。近日中に、再び更新をする予定です。
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そして、父ちゃんがみなさんの悩みや質問にこたえるラジオ、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。