自分流・日々のことば
日々のことば「黙」 Posted on 2025/08/26 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
世の中には、ぎゃあぎゃあうるさい人がおりますね。
いっちょかみしてくる人とか、ともかく、ご自分の意見をばんばん言い続ける人とか、SNSの影響なんでしょうか、ちょっと黙ってみてはどうですか、と思うようなやかましい世界に時々、へきえきとなります。
世の中、みんなご意見番みたいになって、いろいろと言われるので、ぐったり疲れてしまうわけです。
一方で、意見はあるが、コメンテーターみたいに、どしどし意見をいえず、萎縮されている人もおおぜいいます。
世の中、うるさい人が目立つので、軽視されがちですが、寡黙な人の方が圧倒的に多いんですよ。
「鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」
ということばがあります。
鳴くことのできない蛍が、夜に、背一杯の光を放つ姿を、昔の人は、身を焦がすようだ、と思ったわけです。
ぎゃあぎゃあ騒ぐ人よりも、寡黙な人の方が、思いは深く切実だという意味なんですね。
このような弱肉強食の時代になりますと、切実な光を放っている蛍のような人がたくさんいるのだ、と思います。
似たようなことばに、
「口は閉じておけ目は開けておけ」
というのもありますね。
余計なことは言わず、物事をちゃんと観察しておけ、という戒めで、「keep your mouth shut and your eyes open」の英訳になります。
世界共通なんです。
目は開けていきましょう。
もっとも、言わなければ事態は変えられないので、力を合わせて声をあげていくことも、必要でしょう。
「言うべきことは言う」
英語に、
「Speach is silver,Silence is golden」
というのもあります。
日本の「沈黙は金雄弁は銀」ですね。
黙っている方が雄弁であるより効果がある、というような意味で、思い当たることがあります。
ぼくは若い頃、がむしゃらすぎ、よくマスコミに叩かれました。今もですが、笑。
そういう時、必死で反論をしても「多勢に無勢」でうまく、やり返すことができなくて、歯がゆいことがありました。
で、自分に自信がある時は、むしろ、黙った方が功を奏したことがあります。
歯がゆいとは思いますが、信念があれば、自分を信じて、黙々とことにあたるのがベストかな、と思うのです。
結局、最終的に、結果だけが世の中を動かすのですから、ぎゃあぎゃあ騒ぐより、目の前のことをコツコツやるに勝る方法はないというわけです。
黙っている者を、威勢のいい連中は恐れます。
独裁者が一番恐れているものは、敵国じゃないんですよ、民衆です。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
大丈夫です。
今日のひとこと。
「鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」
今日のごはん。
「生ハムといちじくのサラダ」
誰が考えたんでしょうかね、このいちじくと生ハムのコラボレーション、素晴らしいです。生ハムメロンに負けないくらい、最高。で、ぼくのヘルシーな生活にいつも光を投げかけてくれています。
身体の内側から、きれいな、毎日をおくってまいりましょう。
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ということで、芸術の秋だからこその、個展情報です!!!
近づいてきましたよ。準備万端です。
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催します。
だいたい、午後の14時から、18時くらいまで開画廊いたします。みんな長く働かないので、午後、お越しください。
今回は、浮世絵にヒントを得た新しいシリーズ、ボタニカルな美しいノルマンディ世界、など、今までにない辻ワールドでおおくりします。全23~24点の渾身作で行くよ。笑。
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辻仁成の美術サイト、昨日、更新されました。近日中に、再び更新をする予定です。
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※ 芸術新潮にインタビューされた記事が出ています。本屋さんで、ぜひ、チェックしてみてくださいませ。ついでの、時に。
そして、父ちゃんがみなさんの悩みや質問にこたえるラジオ、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。