自分流・日々のことば

日々のことば「百里」 Posted on 2025/08/30 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
人生の長さは人それぞれですが、一生は一生ですね。
短い長いで考えず、「短くても一生、長くても一生」という風に夢多きぼくは捉えて生きています。
しかし、どの時点であろうと、今、という瞬間はその一生において、明らかな通過点なのです。
若者でも、お年寄りでも「今日の今」という瞬間は、人生の途上の一点。

個人的な話でたいへん恐縮ですが、ぼくは十代のころ、「夭折」に憧れていました。
20歳を越える自分を想像して生きたことがなかったんです。
不思議ですけれど、こんなに長く生きるとは思ってもいませんでした。笑。
だから、18歳の時、小生はすでに「自分は晩年にいる」と考えていたんです。
この頃は「詩人」になりきっていたので、辞世の句、ばかり書いていました。実に、笑えますね。
でも、20歳を過ぎ、30歳を過ぎます、40も・・・。
「Don’t trust over 30」
ということばがありますね。
70年代、ヒッピーの時代にアメリカで流行ったことばです。
「30歳以上の人間は信じるな」
ぼくはこのことばが好きで、大人がこの社会をダメにしている、とマジで信じていました。
最近、テレビとかで、有名の大学の先生とかその信奉的な若者が過激な老人批判を繰り返してますよね、「死んだ方がいい」などと、・・・あれ、パクリなんです。

このことばはどこから来たのか、といいますと、言論の自由運動を推進した環境活動家、ジャック・ワインバーグが、1964年、インタビューを受けた際に、メディアに腹を立てて、叫んだことばの一節から飛び出し、拡散されたと言われています。
1964年のことですよ。
ヒッピー文化に影響を受けたアーティストらが、このことばを使ったので、大流行したわけです。
その倍も生きた小生には、そんな時期もあったよね、と苦笑しながら、思い出す、かなり古びたフレーズにすぎません。
大事なことは、今の自分に自惚れないこと、これにつきます。
「百里を行く者は九十を半ばとす」

日々のことば「百里」



人間というのは、権力者なんかもそうですが、すなわち、歳をとっていくとだんだん横柄になり、たいした人間でもないのに、若者に威張るものだから、「Don’t trust over 30」なんてことばが大流行しちゃうんでしょうな。
そして、人生とか一生というものは、終盤に差し掛かると、油断しがちで、晩節を汚すといいますが、最終コーナーを曲がったくらいのところで大失敗をする者が出てきます。
末路が「勘違いした老人」というのは、確かにきつい。
こういう老害が日本をダメにしてる一端であることは、認めないとなりません。
それで、大昔の徳のある人が、
「百里を行く者は九十を半ばとす」
と説いたんですよ。
一生が百里の行程であるならば、九十里でやっと半分と考えておけば、失敗もせんだろう、と。
まだまだ、人生、半ばだと思って気を緩めないことが、大事だという戒めですね。
今のぼくなんかには、耳の痛いことばですが、でも、その通りだと思います。
社長椅子のようなものにふんぞり返って、偉そうにしていちゃいけません。
九十里で半分、素晴らしい発想じゃないですか。
小生、あと何年生きられるかわかりませんが、3000枚は絵を残したいんです。
なんでか?
生き切るためですよ。生き切りたいんですわ。
人生に浸りつくして、よっしゃー、納得した、さいなら、とこの世をさっぱりと去りたいんです。
生まれ変わるつもりは一切ありません。来世なんか不要です。
完全燃焼が、最高です。
そのためには、「百里を行く者は九十を半ばとす」は響きますね。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のひとこと。
「百里を行く者は九十を半ばとす」

自分流×帝京大学

日々のことば「百里」



今日のごはん。
「のりたま」

日々のことば「百里」

汁物は、白菜を茹でて、茅乃舎の野菜だし、とろろ昆布、生姜、などで、・・・立派な一食になりました。はい。
こういうものが、人生のご馳走だと思いますね。

ということで、あと、ひと月半ほどで、フランスは、パリのマレ地区にある画廊(20 Thorigny)で、辻仁成の個展が開催されます。


パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催します。
だいたい、午後の14時から、18時くらいまで開画廊いたします。みんな長く働かないので、午後、お越しください。
今回は、浮世絵にヒントを得た新しいシリーズ、ボタニカルな美しいノルマンディ世界、など、今までにない辻ワールドでおおくりします。全23~24点の渾身作で行くよ。笑。

辻仁成の美術サイト、昨日、更新されました。近日中に、再び更新をする予定です。

辻仁成 Art Gallery

日々のことば「百里」

※ 芸術新潮に、記事出ていますよ。

日々のことば「百里」

そして、父ちゃんがみなさんの悩みや質問にこたえるラジオ、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。

TSUJI VILLE



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。