自分流・日々のことば

日々のことば「諂」 Posted on 2025/09/01 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
世の中には下の人にはえらそうにして、えらいひとにはへつらう、嫌な人がいます。
ぼくは会社員の経験がないので、そこまで、上の人にいじめられたことはないですが、でも、それでも権力を持つ人から、圧力というのを受けたことはあります。
ぼくの若い友人たちと飲むと、普段、我慢しているのでしょうね、手厳しいことばが飛び出します。
「その人はぼくにはでかい態度をとるんですが、ぼくがその人の上司と仕事を始めたとたん、手のひらを反すような別人になって、ほんとうにくそ野郎でした」
上品な友人なので、その人の口から「くそ野郎」ということばが出て、ぼくは飲みかけていたお酒を吹き出しそうになったものです。
相当に、我慢をしていたんでしょうな。
人によって、顔色をころころと変えるカメレオンのような人はけっこういるものです。
「下いびりの上諂い(したいびりのかみへつらい)」
ということばがあります。
立場上、仕事を依頼する側にいる人というのは、とかく、依頼される側に強く当たってイジメるような態度に出ることがあります。
でも、そういう人というのは、その人に仕事を回しているような上司には、へつらっているわけです。
このことばの対義語は、
「強きを挫き弱気を助ける」
ですが、なかなか、そんな人っていませんね。テレビドラマの中だけです。

日々のことば「諂」



犬を飼って、わかったことがあります。
「弱い犬ほどよく吠える」
ってのは、ほんとうなんです。
強い自信のある犬は、吠えることがめったにないんです。
これ、人間も一緒だと思います。
「弱い人間ほど偉そうにする」
って考えれば、この人はかわいそうな人だな、とわかるかな、と思います。
一生、「下いびりの上諂い」を繰り返していくのですから、その先にあるものが知れていますね。
人間は、上下左右ではなく、同じ地平に立つ、人間であることを基準にして、いかなる環境でも、あらゆる人々と同等にふるまえる者であるときに、慕われたり、助けられたりするものです。
ま、難しいことかもしれませんが、せめて、力を持っても、周囲に偉そうにしない、ことが大事ですよね。
真実、尊敬できる人とは、威張ることなく、わきまえている人じゃないでしょうか。
そうなりたいものです。
はい、今日も自分の居場所で精一杯生きたりましょう。
大丈夫です。

今日のひとこと。
「下いびりの上諂い」

自分流×帝京大学

日々のことば「諂」



今日のごはん。
「茄子の焼きびたし」

日々のことば「諂」

日々のことば「諂」

※、フライパンでよく焼いて、たれにつけて、一晩冷やして、召し上がれ。冷やすと味がしみて最高ですぞ。

日々のことば「諂」

ぼくの毎日の楽しみは、昼飯と、夕飯です。今日は何を食べようと思って、一日の食事を考える瞬間がほんとうに大好きです。知り合いや友だちが来る時に、何を喰わせてやろうと、上から目線で考える瞬間も大好きです。億万長者でも貧しいものを食べている方々もいます。お金がそんなになくても、誰よりも美味しいものを毎日食べている人もいます。どっちが幸せですか?本当に美味しいものは、今日を大切に生きる時に出現するのです。

ということで、芸術の秋だからこその、個展情報です!!!
近づいてきましたよ。準備万端です。

パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催します。
だいたい、午後の14時から、18時くらいまで開画廊いたします。みんな長く働かないので、午後、お越しください。
今回は、浮世絵にヒントを得た新しいシリーズ、ボタニカルな美しいノルマンディ世界、など、今までにない辻ワールドでおおくりします。全23~24点の渾身作で行くよ。笑。

1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
一部の作品は、辻仁成の美術サイトで確認できますので、どうぞ、御覧ください。

辻仁成 Art Gallery

日々のことば「諂」

そして、父ちゃんがみなさんの悩みや質問にこたえるラジオ、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。

TSUJI VILLE



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。