自分流・日々のことば
日々のことば「驕」 Posted on 2025/09/03 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
世界各地で権力を持った者がのさばる、すごい時代になってきました。
そして、栄枯盛衰というのか、昨日まで頂点にいた人が、不意に消えていなくなる世の中でもあるようです。
思い出されることばは、
「驕れるもの久しからず」
ですね。
どういうことばか、と申しますと、
権力を手に入れた途端、高慢になる、そういう思い上がったふるまいをする人間というのは、長くその身分や地位を維持することが出来ないものだ、
という意味になります。
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「久しからず」とはどういう意味なのでしょう?
「久しい」の否定形に当たる「久しからず」ということばには、「長くは続かない」という意味があります。
驕った人間は、長くは続かない、という意味なんです。
若い頃の小生、笑、勢いだけでい生きていた時代がありました。やんちゃで、放し飼いの暴れ馬のような青年だったのです。
あの頃を思い返すと、「驕れるもの久しからず」の連続だったように思います、猛省・・・。
だから今は、田舎で隠居生活のような余生をおくっているのかもしれません。
この「驕れるもの久しからず」ということばは、平家物語から来ています。
なので、「驕る平家は久しからず」という言い方もあります。
平安時代末期の軍記「平家物語」の冒頭の一節を思い出します。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す」という一文を学生時代に習ったことがありませんか?
この一節の最後に、「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し」と続きます。
仏教的な無常観を描いているんですな。
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武家の平家は、平清盛の時に栄華を極めるのですが、権力を掌握し、驕り高ぶった態度で周囲の人々に接し、その反感を買い、結局、清盛の死後、源氏によって滅ぼされてしまいます。
「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢の如し」
となったんです。
この物語が琵琶法師によって全国に広められ、高慢な生き方への戒めとして「驕れる人は久しからず」が定着していきます。
天下をとっても、春の夢のような天下だった、ということですね。
転落する人は、一瞬で、転落します、今の時代も・・・。
この世界情勢も今後どうなるかわかりません。
私たちは驕った人間たちの栄枯盛衰を眺めながら、自分もまた身を引き締めて生きないとならないということでしょう。
小生も気を付けて、ノルマンディの山奥で、静かに暮らしたい、と思うのでした。
必要以上のものはいりません。
はい、長い道中、気を付けてまいりましょうね。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「驕れるもの久しからず」
今日のごはん。
「モルトソーセージと赤キャベツのビネガー煮込み」
たまにソーセージを食べたくなります。キャベツと一緒にビネガーで煮込むとこれが、ドイツ風になります。すっぱうまいんです。庭仕事(いま、ハーブを育てています)のあと、これとビール、最高でした。幸せですね。
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ということで、芸術の秋だからこその、個展情報です!!!
近づいてきましたよ。準備万端です。
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催します。
だいたい、午後の14時から、18時くらいまで開画廊いたします。みんな長く働かないので、午後、お越しください。
今回は、浮世絵にヒントを得た新しいシリーズ、ボタニカルな美しいノルマンディ世界、など、今までにない辻ワールドでおおくりします。全23~24点の渾身作で行くよ。笑。
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1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
一部の作品は、辻仁成の美術サイトで確認できますので、どうぞ、御覧ください。
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※ 新しいフライヤーが出来ました。来月ですからね、頑張らないと・・・。
そして、父ちゃんがみなさんの悩みや質問にこたえるラジオ、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。