自分流・日々のことば

日々のことば「木」 Posted on 2025/09/04 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
人生というものは、あまり余裕がありませんからね、よく、見誤ることがあります。
時間もないですし、欲望もありますから、とかく目先のことに囚われがちになって、本質を見失うことがままあるんです。
人生はこれの連続でしょうか。
人間ですから、小銭がほしいし、ちょっとした勝利もほしいです。だから、目先のものへと目が走るのは、当然でしょう。
でも、大事なことは最終的な、全体的な、目標達成のはず。
日銭はもちろん大事ですが、そればかり追求していると、そのことにかまけて、大きな目標に手が届かないことがあります。
こういうことを、
「木を見て森を見ず」
といいます。
全体である森のことなど考えずに、まずは、目の前にある木一本を見てああだこうだ行動をする、こと。
だから、森のレベルでその行動を達成することが出来なくなるんですよね。
もちろん、木を見る、ことは大事ですが、木を見ながら、ちょっとひいて、森全体を見極めることが大事だという教えです。
「木を見て森を見る」
ということばもありあす。
これは、見ている木を通して、そこから全体である森を感じている、ということです。

日々のことば「木」



小説を書く時、ぼくが注意をすることがあります。
細部と全体を、最初に掴んでから、書きはじめるようにしているんです。
全体は細部で成り立っています。
細部がどんなに素晴らしくても全体が不完全ではどうしようもありません。
細部にこだわりすぎると、時として、物語の全体を見失うこともありますね。
すべての細部が素晴らしければ、全体も素晴らしくなるかというと、一本一本の木はすごいのだけれど、森になると、まとまりのない変な森になっていることもしばしばあるわけです。
「木を見て森を見ず」
とは、そういうこと。
部分にとらわれずぎて、全体を見失うことなんです。

だから、まず、森を見て、全体を掴んでから、目の前の木を見ることをお勧めします。
「森を見て、木を見ず」
ということばも成り立ちます。
森という全体にとらわれて、そこに生えている一本一本の木にのことが目に入らない場合のことを指します。
あ、ついでに、同じようなことばですが、
「鹿を追う者は山を見ず」
というのもあります。
目の前のことに夢中になり、鹿を追っかけすぎ、危険が迫っていることに気が付かないことを言います。
目の前の鹿を捕まえようとして、森に入ったら、山奥まで入り込んでしまい、戻れなくなるとか・・・。
目の前の利益に心を奪われ、道理を忘れてしまうことですね。
美術館に行ったら、まず、少し離れた場所からまず絵の全体を眺め、その全体を知ってから、少しずつ近づき、細部を堪能していくのがいいですよね。
これ、絵を描く時にも役立ちます。
人生も、全体と細部のバランスが大事だということです。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
大丈夫です。

日々のことば「木」

今日のひとこと。
「木を見て森を見ず」



今日のごはん。
「とろとろハヤシオムライス」

日々のことば「木」

日々のことば「木」

たまごが、とろとろに仕上がりましたよ。

日々のことば「木」

出来るだけ、油やバターを使わないように心がけているので、こう見えて、カロリーは超少なめです。ご飯もお茶碗半分くらいの量です。ま、とわいえ、カロリーありそうですね。笑。たまには、いいか。
えいえいおー。


ということで、芸術の秋ですぞ、パリ・個展情報です!!!

パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催します。
だいたい、午後の14時から、18時くらいまで開画廊いたします。みんな長く働かないので、午後、お越しください。
今回は、浮世絵にヒントを得た新しいシリーズ、ボタニカルな美しいノルマンディ世界、など、今までにない辻ワールドでおおくりします。全23~24点の渾身作で行くよ。笑。

1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
一部の作品は、辻仁成の美術サイトで確認できますので、どうぞ、御覧ください。

辻仁成 Art Gallery

日々のことば「木」

そして、父ちゃんがみなさんの悩みや質問にこたえるラジオ、毎月3回やっている人生を語り倒すラジオ・ツジビルはこちらから、です。どうぞ。

TSUJI VILLE



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。