自分流・日々のことば
日々のことば「業」 Posted on 2025/09/27 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
「自業自得」ということばがあります。
「勉強しなかったんだから落第も自業自得だよ」というような使い方をしますね。
一般的に、悪い行為が悪い結果を生む場合に現代では使われていますが、実は、よい行為をしていい結果が生まれた場合でも、「自業自得」と使うことが出来るのです。
不思議ですね。ポイントは「業」にあります。
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では、「業」とは何でしょう。
これは仏教の古い教えの中にあります。
仏教が言うところの「業」とは、簡単に言うと「行為」のことを指しているのです。
業はサンスクリット語のカルマから来ています。
「カルマ」よく聞きますよね。
カルマは、その行動の結果が未来の自分の出来事に影響を与えている、という概念。
なので、本来、良い行いには良い結果が、悪い行いには悪い結果が伴うとされています。
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なので、カルマ(業)は、今、私たちがとっている行動や思考が将来、自分に帰って来るよ、ということなんですね。
だから、近年では、「自業自得」が悪い意味に使われることが多くなったのでしょう。
自得というのは、めぐり巡って自分が受け取る、ということです。
でも、「自業自得」はいい意味でも使うことが出来るって、個人的には、ものすごく救われた気持ちになるんですよね。
自分の行いは、自分で決めることが出来るということだから、自分が正しいと思う道をどんどん突き進めば、自得するものは、その結果、ということになるので、納得できます。
自分の運命は今の自分が生み出しているのだ、と思えば、頑張りがいもあります。
来世とか前世に関心がないぼくには「因果応報」はちょっと腑に落ちないのですが、「自業自得」は今の自分が何をするかで、未来が決まるというもっともな哲学なので、素直に受け入れられまるというわけです。
ダメな時には「自業自得」
最高な結果が巡ってきても「自業自得」
ならば、今を精一杯頑張るしかない、と思うわけで。
自分の行為は、他人がとやかく言えることではないので、自分で決定していくしかありません。
「自業自得」をいい意味で自得するために、よーし、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
辻仁成、個展情報。
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パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて「辻仁成展」2週間、開催。
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1月中旬から3月中旬まで、パリの日動画廊において、グループ展に参加し、6点ほどを出展させてもらいます。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。