自分流・日々のことば

日々のことば、「源」 Posted on 2025/10/19 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
「汲流知源」という仏教のことばがあります。たまに聞きますよね。
現代のことばにすると、「流れを汲みて源を知る」(ながれをくみてみなもとをしる)となります。
これが、いいことばなんです。
むかし、九州のお坊さんに教えて頂いた言葉ですが、その頃、小生はまだ子供、小学生だったので、よく意味を理解することができませんでした。
しかし、年齢を重ねるうちに、なるほど「汲流知源」とはそういうことだったのか、と思い知るようになります。
いろいろな意味に解釈できるんですが、おおまかに言いますと、川の流れを想像してみてください。
その流れている水を手で掬って汲んで、見てください。
濁っている水もあるでしょうし、何か色を感じる水もあるでしょう。
そういう汲んだ水の様子から源流の様子を想像することが出来ますよね?
世の中の結末とか結果とか末端を見て、その起きたことの源流を想像する、という意味になるのです。
つまり、その人の行動を見ていると、その人の歩いてきた道、人生、環境、心根の在り方を察することが出来ますよ、という意味なんです。

日々のことば、「源」



人間は、生きている限り、様々な出来事に遭遇します。
びっくりするようなこともありますが、そのすべての事象には、それが起きる源流があったのだ、ということです。
なので、物事には理由がある、ということですから、源を想像し、冷静になって対処をしてくことが大事だという教えですね。
原因や根源というものが、今この瞬間の結果を招いているのだ、とするならば、これからの身の処し方というものも、おのずとわかって来るというものです。
「流れを汲みて源を知る」
出口に立ち、入り口を思うということですが、人間には時として必要なことなのです。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

日々のことば、「源」



今日のひとこと。
「流れを汲みて源を知る」

日々のことば、「源」

今日のごはん。
「たらのレモン生パスタ」
ああ、美味しかったっす。

日々のことば、「源」



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。