自分流・日々のことば
日々のことば「九仞の功」 Posted on 2025/11/01 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
詰めが甘くて、完成出来ないものごとって、よくありませんか?
小生もそういう経験、よくあります。どこで間違えて詰め切れなかったんだろう、って思うこと。
最後の最後の努力って、実に大事なんですよね。
悔しい思い、何度も経験してきた小生ですが、こういう経験はいくつになってもあるものですな。
だから、気を引き締めていけ、ということばがあります。
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九仞の功を一簣に虧く(きゅうじんのこうをいっきにかく)
なんだか、難しい漢字がたくさんでてきます。中国のことばなんですね。
「仞」というのは、中国の、周の時代の寸法の単位で、だいたいですが、長さ約7尺、と言われています。
それの9倍という高さですから、けっこう高いですね。1尺で30センチ。
それだけの高さの山を築いてきたんですが、最後の最後に、足りなかったんですよね。
「簣」は土を運ぶ「もっこ」のことなんですが、このもっこが一杯足りなかった、ということで、築山が完成しなかった、という故事から、このことばが出来た、という次第です。
長年の努力が最後のちょっとしたミスで成就出来ない虚しさを説いたことばになります。
最後の詰めをおこたると、失敗に終わることがある、という教えです。
そうなんですよ、小生はよくやりがちなんです。
最後の詰め、おしい・・・悔しい。

なので、最近は、どんな時も、とくに調子がいい時とかに、油断するな、必ずどこかに伏兵が隠れているぞ、気を抜くなよ、と自分に言い聞かせて生きているんです。
それでも、九仞の功を一簣に虧く、ことがままあるのですから、人生っちゃ恐るべしですね。
ま、用心し過ぎても逆にやり過ぎてしまい、ダメになることがあるわけですから、心がけが肝心ということです。
九仞の功を一簣に虧く。
完成をしても、まだまだ油断しない、くらいでちょうどいいのかもしれません。
似たようなことばに、百日の説法屁一つ、というのがあります。
あはは、読んで字の如しです。
気をつけましょう。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「九仞の功を一簣に虧く」

今日のごはん。
「じゃがいも炒め」

辻仁成、エグジビジョン情報です。
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1月中旬から、3月中旬まで、パリの日動画廊さんで、グループ展に参加します。何作品出るか、まだ話し合い中ですが、たぶん、6~8点の間じゃないかなと思いますよ。
一部の作品が、ぼくの美術サイトで更新されましたので、御覧ください。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



