自分流・日々のことば
日々のことば、「凧」 Posted on 2025/11/20 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
「困難の中にチャンスがある」
と言ったのはアインシュタインですが、まさに、その通りでございますね。
わたしたちの人生、困難の連続なのが普通であります。そして、そういう乗り越えないとならない壁を乗り越えて成長をするのがわたしども人間なのかもしれませんね。
ですから、アインシュタインのこのことばには、許されたような喜び、を覚えることができます。
困難の中にこそチャンス(機会)がある、ということです。
☆
自分の話で恐縮ですが、何度も、「もう駄目かもしれない」と思ったことがございました。
でも、そういう時にこそ、思わぬ力が出てまいりまして、なんとか、そこを乗り切ることができたように思います。
なんとかなってきたんだから、なんとかなるよ、ということです。
☆
あの時、あの瞬間、ほんとうに苦しかった、辛かった、壁に激突していた、みんなに見放されたと思っていた、なのに、でも、今はなんとか乗り越えることができている、じゃないか・・・。
そして、思えば、そういう大変な時期を乗り越えながら、自分は何かの方法(経験)をゲットしていてきたような気がしてなりません。
壁が高ければ高いほど、その分、自分も大きく成長していたんじゃないだろうか、ということに、今更ながら、気付かされているようなところがある、わけでございます。
きっと、アインシュタインさんはぼくらが思うよりももっと困難なことを乗り越えて、ああいう理論に辿り着いたのでしょうね。

もう一つ、英語のことばなんですが、素晴らしい教えがあります。
「カイト(凧)が高くあがるのは、風が強い時で、それは風に流されている時じゃない」
アインシュタインのことばに似ていますね。困難な時だからこそ、のぼるんだ、ということですね。
英語だと、
「kites rise highest againste the wind. not with it.」
となります。
英国のチャーチル元宰相が言った言葉とされていますが、ちょっと調べたところ、実は、ほんとにチャーチルさんが言ったのかどうか、確定出来ておりませんでした。
むしろ、アメリカの作家、ジョン・ニールが1846年に出したエッセイ「Enterprise and Perseverance」の中に、同じようなことばを発見することができます。
☟
“A certain amount of opposition is a great help to a man. Kites rise against, not with, the wind.”
訳しますと、
「ある程度の逆風(反対)は、人にとって大きな助けになる。凧は風に逆らってこそ、上がるのだ。」
となります。
ま、ただ、どちらが最初に言ったことばか、分かりませんが、意味は一緒ですね。
ニールのことばには、説得力があります。
「ある程度の逆風(反対)は、人にとって大きな助けになる」
その通り、ある程度の逆風ならば、確かに、乗り越えるために力を振り絞ることが出来るでしょう。
そして、なぜなら、
「凧は風に逆らってこそ、上がるのだから」
と続くわけです。
人生には、多かれ少なかれ逆風というのはありまして、でも、人間はそれを乗り越えてこそ、大きく高く上ることが出来るということなんです。
そうであれば、救われるな、と思いませんか?
ぼくはこのことばを逆境の時に心に携えていますよ。
今、苦しい立場にいて、どうしても乗り越えないとならないあなた、きっと大丈夫です。そこを乗り越えた時、あなたは高い場所に辿り着いているはずですから・・・。
いいですね。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

今日のことば。
「ある程度の逆風(反対)は、人にとって大きな助けになる。凧は風に逆らってこそ、上がるのだ。」
今日のごはん。
「蕎麦屋の鶏肉団子」

辻仁成、展覧会情報
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2026年、1月15日から、パリ、日動画廊、グループ展に参加。(辻仁成以外は、Henry Zers, Pierre Lesieur 彫刻のPatrick Blochの3氏)
2026年、11月には、リヨン市で個展が決まりそうです。版画なども出す予定。情報解禁になったら、まっさきにお知らせいたしますので、リヨン周辺在住の皆さま、お楽しみに。
2026年、夏に日本でも個展を開催する予定ですので、8月前半、スケジュールあけておいてくださいまし。

posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



