自分流・日々のことば
日々のことば、フランスのことわざ Posted on 2025/12/08 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
フランスで暮らすための部屋探しなどで、本格的に来仏したのは2000年、2001年ごろでした。
その時、最初に借りたアパルトマンは首相府のすぐ隣、警官が立っている角の建物の屋根裏部屋で、家具付きでした。
そのあと、足場を固めて、2002年に正式に移住をするんですが、オデオンのカフェ「エディターズ」の正面あたりにあるアパルトマンの4階に住んだのがはじまりです・・・。
あれから、もう、23年、24年、経っていますね。来年で、在仏歴25年になるわけです。四半世紀!!!
☆
こんなに長くこの地で生きるとはその時、思っておりませんでした。
人生はいろいろとあり、みなさんもご存じの通り、小生の人生は小生が想像をしていたよりも、やや波乱万丈でした。
子供が生まれた時に借りていたアパルトマンには裏階段があり、裏庭に面して螺旋階段があって、その煉瓦の壁に、誰が書いたか知りませんが、白マジックで「フランスで生きるぞ(vivre en France)」と書かれてあったんです。鮮明に脳裏に焼き付いています。学生や移民の若い子とかが屋根裏に住んでいたので、花の都パリに着いた彼らの意気込みのようなものだったのかな、と思いました。
決意みたいなものですかね、小生も、その文字に奮起したのを覚えています。
そのことをネイティブスピーカーのスタッフさんに話すと、
「先生、それはビバ・フランス、フランス万歳を読み間違えたんじゃないですかね?」
というんです。
人のドリームにケチをつけたがる人間というのは、そこかしこにいます。小生がそう思ったんだから、いいじゃないですか、フランスで生きる、と書いてあったんだよ・・・。ふん!

25年もフランスにいるのに、仏語が下手なものだから、よくこういう口撃を受けますが、怯んだことはありません。
怯んだら負け、謝ったら負け、というのもこの国で最初にならったことの一つでした。(車が軽く他の車に接触したら、まず、謝るな、とフランス人に言われました。状況次第ですが、明らかに自分が悪くない場合は、謝ったら、謝ったじゃないか、と言われてしまうのがフランスだからだそうで、すぐに「すいません」と言ってしまう日本人には耳の痛いアドバイスでしたね・・・。今でも、小生は、肩がぶつかると、ごめんね、と謝ってばかりです・・・。)
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では、在仏歴25年、フランスで出会った,面白いことわざを、ちょっとご紹介しますね。
「La nuit porte conseil」
夜が助言を運ぶ、と訳すんですが、ともかく、今、かっかしても解決策は出ない、とにかく寝てよく休め、明日になれば、きっといい解決策が出てくるよ、という助言になります。
いい言葉ですよね、
日本にも似たようなのがありますね。明日は明日の風が吹く、とか・・・。
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もう一つ、似たような言葉に
「Qui vivra verra」
というのがあります。
さんまさんの、生きてたら丸儲け、みたいな意味なんですが、・・・。
直訳すると、
「生きてみなければわからない」
になります。生きてりゃわかるぜ、みたいな感じでしょうね。
これもよく耳にします。
結果はあとからついてくるじゃん、だから、今はとことんやろうぜ、みたいな、かなり前向きな言葉ですね。
助けられますよねー。
実際、人生というのは、やってみなければ分からないものです。
やらないで後悔をするよりも、やってみて、先を考えていくのがいいんじゃないでしょうか。
やらなければ始まりませんし・・・。
「果報は寝て待て」
ああ、日本にもありました!
ということで、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。


はい、来月、2026年の1月、パリの日動画廊で開催されるグループ展に参加します。
1月15日から3月7日まで。
場所は、パリ8区ですね。エリゼ宮殿の傍です。
それから、8月前半に一週間程度、東京で個展を開催いたいます。
今回のタイトルは「鏡花水月」です。(予定)
タイトルは突然かわることがございますので、ご注意ください。
そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催いたします。詳細はどちらも、決まり次第、お知らせいたしますね。
お愉しみに!
今日のひとこと。
「生きてみなければわからない」

今日のごはん
「ミニトマトのスパゲッティ」
posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



