自分流・日々のことば

日々のことば、卵 Posted on 2025/12/20 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
何かをする時、何かを始める時、何かをおこす時って、その何かの前に、何かをやらないと、その何かが始められないのは当然ですね。
じっとしているだけではじまる何かって、あまり聞いたことがないです。
つまり、何かやるぞ、と決意をしたならば、多少のリスクというのは覚悟しないとならないし、多少の労力をおしんでいては何も動かない、ということなんです。

分かってはいるんですが、なかなかその一歩を踏み出せない、億劫なのは仕方がないかもしれません。
比較的にぼくはこの何かやるぞと決めた時の最初の行動が好きだったりする、珍しい人間ではあります。
ものごとには順序があって、そのファーストステップに燃えるタイプでもあるわけで・・・。しかし、これは、ラッキーな性分でございました。
何かちょっとしたことをやるぞ、と決めると「いい予感」がおきます。もちろん、「不安」もつきものですが、いい予感と不安はセットだから仕方ない。
ドキドキ、ワクワク、ということです。
ドキドキがあるから、ワクワクがあるわけですね。
もしかすると、ぼくは結果よりも、この最初の初期衝動が好きなのかもしれません。
例えば、オムレツを作るならば、卵を割らないと出来ないように。

日々のことば、卵

ということで、いい言葉がフランスにはあるんです。
「卵を割らずにオムレツは作ることが出来ない」
というもので、仏語だと、以下のようになります。
On ne fait pas d’omelette sans casser des œufs.
(オン・ヌ・フェ・パ・ドムレット・サン・カッセ・デ・ズ)
当たり前じゃん、って言いたい気持ちはわかるんですが、そこが素敵じゃーん、と思いません?
そして、人生に一生付きまとう言葉でもあります。
オムレツを作る人はみんな知っています。まず、卵を冷蔵庫から出して、割らなければ、オムレツが出来ない、ということを・・・。
・・・ですよね。

美味しいオムレツを作るためにも、まずは、卵を割ることからはじまる。つまり、ものごとには、多少の労力、あるいは、リスクがつきもの、ということになります。
何かを成し遂げるためにはそれ相応の苦労が伴うわけです。
なので、小生は、卵を割るのが大好き。毎日、一度は卵を割っています。あの、そもそも卵好きなんです。
数々の卵料理を作ってきましたが、第一歩は卵を割ることにつきます。
むしろ、卵を割る瞬間、来たぞ、今日もこの瞬間がやってきた、と嬉しくなる人間が小生です。☜適度にアホなところ、自分の好きなところでもあります。

絵を描く時もキャンバスのビニールを破ることからはじめます。ギターを買ったら弦を替えるし、健康を手に入れたい時には、家の周辺を走りだします。
その最初のスタート、ドキドキ、ワクワクしますよね。するならば、いい人生だと思いますよ。
面倒くさいこともあるでしょうが、それだけ、大きなチャレンジなんだと思います。卵を割る気持ちで挑んでみてください。いつか、いつか、実る日がやってくるはずです。がんがん、割りましょう。
はい、そして、今日も背一杯生きたりましょう。
えいえいおー。

日々のことば、卵

今日のひとこと。
「卵を割らずにオムレツは作ることが出来ない」

今日のごはん。
「月見そば」

日々のことば、卵

2023年、オランピア劇場での父ちゃんライブ盤ですが、じわじわっと聞かれています。元気になりたい時とかに、どうぞ。

展覧会情報

近づいてきました。もう、ひと月、きっていますね。ま、グループ展で、父ちゃんメインじゃないので、気が楽。笑。
2026年の1月、パリの日動画廊で開催されるグループ展に参加します。
1月15日から3月7日まで。結局、11作品の展示となりました。フランス人巨匠も参加するグループ展だそうです。
GALERIE NICHIDO paris
61, Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
Open hours: Tuesday to Saturday
from 10:30 to 13:00 – 14:00 to 19:00
Tél : 01 42 66 62 86

それから、8月前半に一週間程度、東京で個展を開催いたいます。詳しくは、年明け後に、ご報告いたします。
今回のタイトルは「鏡花水月」です。(予定)
タイトルは突然かわることがございますので、ご注意ください。

そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催予定しています。詳細はどちらも、決まり次第、お知らせいたしますね。
お愉しみに!

辻仁成 Art Gallery
自分流×帝京大学



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。