日々のことば
日々のことば「立つ」 Posted on 2025/07/23 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
好きなことばに「七転び八起き」があります。
みなさんも、ご存じですよね。
でも、不思議じゃないですか?
七回転んだら、起き上がるのも七回のはずなのに、八回、起き上がっている!
これはどういう意味なんでしょう。
学生だった頃、調べてみたことがありました。
諸説ありますが、まず、数字に関していうと、七という漢数字は、昔から、生きているあいだに降りかかる困難とか試練を象徴する数字と言われていたようです。
ラッキーセブンというから、いい意味しかないのか、と思っていましたが、こちらでは、そうじゃなかったんですね~。
で、逆に、八という漢数字には、見てお分かりのとおり、末広がり、を感じさせるデザインがあります。
なので、縁起のいい数字とされてきた歴史があるようです。
そこから、無限の可能性とか、何度でも起き上がるエネルギーの強靭さの象徴とされていたんですな。
この漢数字特有の理由から、「七転び八起き」となったわけです。
七回転んでも八回起きるくらいの熱意が必要だ、とこのことばは教えてくれています。
だって、七回転んで七回起き上がるのじゃ、普通じゃないですか。
しかし、七回転んだのに、八回も起き上がると書いたら、それが人に与える影響の大きさは計り知れない、ということになります。
何度でも起き上がってみせるぞ、ということばの力強さを感じとることができますね。
実は、子供の頃、うちの玄関には大きな達磨さんの置物がありました。
父が好きで、家に帰ると、大きな達磨が出迎えてくれたものです。
もちろん、父が一番好きなことばが、この「七転び八起き」だったのです。
このことばは、禅宗の達磨大師の故事に由来されているようです。
だるまさんって、横にしてもひょいと起き上がりますからね。あれは、見ていて嬉しくなります。
人間も、本来、そういう生き物なんじゃないでしょうか?
ぼくらは何気なく起き上がる朝、必ず、起きたら、前に一歩踏み出します。
「八起き」しているんですよね、実は、毎朝。
人間、困難のない人なんぞいません。
でも、それを乗り越える時に、人間らしさが生まれます。
乗り越えてやろうじゃありませんか。
はい、今日も精一杯生きたりましょう。
えいえいおー。
今日のひとこと。
「七転び八起き」
※ 行くで!
今日のごはん。
「神戸、すじオムレツ」
※、最高に美味しい鉄板焼き屋さんでした。
「Le Visiteur」展、
岡山、7月28日まで、岡山天満屋本店、美術画廊にて開催中。
パリ、10月13日から26日まで、パリ、ピカソ美術館そば、GALERIE20THORIGNYにて。
問い合わせは、各画廊へお願いします。
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posted by 辻 仁成
辻 仁成
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作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。