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自分流塾「長い人生、夢の引退や夢からの卒業も必要な時がある」 Posted on 2023/12/05 辻 仁成 作家 パリ

たくさんの夢を描いて生きてきました。
そんなぼくでも、諦めたこともあります。
どこかで人間は必ず諦めないとならない瞬間があるのです。
そうしないと次へ進めないからです。

しかし、僕に関していえば、諦めるのが得意じゃなかった。
諦めることは人生に敗北することだと思い込んで生きてきたからです。
なので、絶対諦めない、が信条でした。
不撓不屈が一番好きな言葉だった。
ところが最近、この考えを多少軌道修正することにしたのです。

若い頃は諦めないで、物事を先送りするだけの時間の余裕がありました。
まだ、若い。貫いていけば必ず突破できると妄信していたのです。
しかし、ある程度の年齢に達し、時間が限られてくると、
全てを完璧にやり遂げることよりも、もっと大事なことがあることに気が付きはじめます。
やり遂げたいことを優先し、そのほかは諦めよう、と思いました。

はじめて諦めるということを自分に認めた瞬間でもありました。

やるだけやったのだから、まずはそこを認めてやろう。
そして、その場所を次の夢に譲ってやろう、と思ったのでした。
夢の引退みたいなことでしょうか。
寂しいですけど、うやむやにするよりはいい。納得できます。

自分の限界を知って人ははじめて幸せを見つけることができる。
しかし、こういう潔い諦めができたとき、集中力が増すのです。
だからこそ、絶対に精一杯生きてみせる、と思うものです。
自分を信じることと、現実と妥協することとの狭間で人は揺れます。
つねに、冷静と情熱のあいだ、なんですよ!!!
 

自分流塾「長い人生、夢の引退や夢からの卒業も必要な時がある」



諦めることは、人生の後始末の中でも辛く、しかし重要な行動でしょう。
長い年月、屈せずにやってきた者にとって諦めることは何より勇気のいる行動です。
諦め、人生を整理することで、目標を絞り込むことになります。
その時に大事なことは、引きずらずに潔く、ということです。

大事な後始末ですね。

それができたら、再び、新たな目標に向かって、自分を集中させればいいんです。
一つ諦めないと、次が入る場所が確保できません。
駐車場を想像してみてください。古い車が一台入っています。しかし、二台入ることはできません。
その古い車、悩みましたが、手放しました。するとそこにスペースができ、新車がやってきたのです。
夢からの卒業は、次の夢への入り口になります。
諦めるタイミングは大なり小なり、人間には必ず訪れます。
ここが潮時だな、と思う、思える自分でいると楽になります。
人間、やはり人生に納得することがとっても大事です。

やるだけやったんだから、と納得できれば、次も見えてきます。
固執せず潔く諦めたときに、次が満を持して出現する。
そのようなシナリオがギフトのように、長い人生には用意されていたりするものです。
さァ、肩の荷を下ろしてください。
 

自分流塾「長い人生、夢の引退や夢からの卒業も必要な時がある」

自分流×帝京大学
TSUJI VILLE




posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。