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自分流塾「五月病に負けないために、ちょっと変だなと思ったら、休息習慣」 Posted on 2022/04/28 辻 仁成 作家 パリ

新学期がはじまり、新社会人も多く世の中に出るこの季節、「五月病」に罹って、心を壊す人が多くなる。
漠然とした不安に襲われ、落ち着かなくなって、ついにはやる気も出ない。
今まで楽にできていたことが急にできなくなったり、好きだったことに急に興味がわかなくなったり、なんとなくこういう兆候が出ているならば、五月病の可能性があるので要注意である。
ほっとくと鬱になるので、そうなる前に、ちょっと方向を変えてみよう。
やっぱり、大きな原因は、この時期、入学・就職シーズンだから、学校や職場で新たな生活が始まり、慣れない新生活によってストレスがたまっている、ことにある。
もちろん、環境が変わって、周囲からの期待もあるので、つい頑張ってしまうのは仕方がないにしても、無理をすることでストレスもその分たまっているのだ、とまず、頭で理解してみるのも手だと思う。
若い頃、ぼくも「五月病」のようなものに襲われたことがあった。
それでぼくは「人のせいに」した。笑。

自分流塾「五月病に負けないために、ちょっと変だなと思ったら、休息習慣」



え、それはまずいでしょ、と言われるのを覚悟で打ち明けるが、社会が悪いとか、あいつが横柄で悪口ばかり言うのが悪いと、自分を擁護したのである。
もちろん、それだけじゃダメなので、次が大切となる。「こんな世の中に自分が潰されていいのか? 自分が壊れるくらい頑張る必要がどこにあるんだ。休め、今すぐに休んでいい。始まったばかりだけど、一旦、自分のペースを取り戻すのだ」
とぼくは自分に言い聞かせたのだった。
つまり、ストレスというのは、自分を擁護しないから、起こることなので、ぼくはやばいと思った瞬間にまず自分を擁護している。
自分を擁護して何が悪い?
むしろ、自分を擁護しなければ誰も擁護してくれないのだ、自分が壊れてしまう。
もちろん自分も悪いのだけど、自分を責めて自己嫌悪になったらもっと負の連鎖に落ちてしまうではないか。この際、世の中のせいにする。人のせいにする。笑。
ここは頑張らないでいい、壊れないでいい、自分を大切にすることに注力するのだ。
みんな真面目過ぎるのだ。真面目というのは元気な時にしかやっちゃいけない運動だと覚えておこう。
元気じゃない時はちょっとくらい不真面目になってもいい。
そんなに無理をする必要はない、と自分に教えてあげたらいい。
世の中が悪いんだ、ぼくのせいじゃない。なのに、ぼくだけがこんなに苦しい思いをするのは不公平だ。もう、それはやめよう。ぼくに押し付けないでくれ、ぼくは今、休息に入った、でいいのだ。
新生活がスタートしたばかりであろうと、気にすることはない。
自分が壊れてまでスタートさせる生活に未来はない。
逃げろとは言わないが、戦えと思う必要もない。もうちょっとのんびりとやれよ、と自分に言い聞かせることは結構な救いとなる。

自分流塾「五月病に負けないために、ちょっと変だなと思ったら、休息習慣」



そうやっていると気が付くこともある。
もしかすると、仕事の内容や環境が自分に合っていないせいで、「適応障害」みたいな状態になっているのじゃないか、と
慣れない新生活のせいで、つい悲観してしまう、疲れやすい、身体がだるい、意欲がわかない、眠れない、食欲がないなどの心身の症状が現れるのだ。
これは間違いなく五月病なのである。
ところで、五月病は医学用語にはないらしい。つまり逆を言うと、環境が変わり、新しい何かがスタートして、責任感や周囲の期待が大きかったりすると、季節に関係なく、こういう症状が出やすくなるということだ。
人間、出来ることには限界がある、と理解しておくことも大事だ。
とにかく、自分のキャパシティを知ること、そうして、それ以上のことはやらないように、避けること。
逃げる必要もなく、ただ、休息をすること。真面目になり過ぎないこと。
たまに、心の中で、舌を出しても構わない。自分を擁護して、ちょっとだけ図々しくなって、甘えてもいいから、のんびりとやること。
人生は自分のものだから、壊さないように、大切にしていくこと。
一生は一度だが、実は人生は何度でもやり直しがきくのだから、今は力を抜いて、6月を待つべし。

自分流塾「五月病に負けないために、ちょっと変だなと思ったら、休息習慣」



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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。