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自分流塾「自分らしく生きるために、常識から自由になれ」 Posted on 2022/10/06 辻 仁成 作家 パリ

自分流というものの根本にあるのは、自分を貫くことだが、しかし、社会の中で、無理くり、100%自分を押し通すのも、あまりよくはない。
自分の意思を貫くのはいいが、無理に、押し通し過ぎると、意見の異なるものをすべて敵にまわしかねない。
そこでぼくは「敵を味方にしてこその勝利」という言葉を編み出し、自分を貫きながらも、周囲を味方にしていくという、変化球的な生き方を実践してきた。(これが、なかなか簡単なことではないのだが、不可能でもないのだ。出来ると心地よい)
敵を味方にするぞ、と思うことで、この野郎、だけでは解決できなかった人間世界の難しさを悟ることが出来る。でも、どうにもならなくなったときは、この野郎、で終わらせることもあるけれど、それはそれ、最後の最後に・・・あはは。
自分の意思を貫き、しかも、周囲の理解を得られる時、人はちょっと大きな器を手に入れることが出来る。
それにしても、自分の意思を貫くことは、容易なことではない。
では、どうやって、自分の意思を貫くのがよいのだろうか?
「わたしは、こう思う」とみんな考えるのだけど、周囲が全員違う意見だと、どうしても自分を通せなくなるのも普通で、貫きたいのに、みんなが違うので、仕方なく、折れる、ということの繰り返しの人生ではなかったか。
自分の意思を貫く時の一番の問題は、そこにある。
周囲の中で、自分だけ考え方が違う時に、人間はどうしても、我慢してしまう。これが実によくないのだ。

自分流塾「自分らしく生きるために、常識から自由になれ」



そこで大事になるのは、「常識を疑う訓練」ということになる。
ぼくは幼い頃から、世の中の常識こそが人間を不自由にさせている、と思って生きてきた。
人々が口にする「常識」は、もちろん、「犯罪はいけない」とか「車は右側を走る」などのルールも含め、いい面もあるのは認めなければならないが、ほとんどの場合、「常識」とは周囲の意見の平均値に過ぎない。
「常識の範囲」という言葉がそれを見事に言い表している。
この常識を疑う訓練を常日頃しておくと、世の中が作った手枷足枷のような常識にとらわれないで生きることが出来るようになる。
役立つ常識と役立たたない常識を見極めることが出来るようになると、自分らしさの枠が広くなる。
「そんなことは無理だ」という常識のせいで、ほとんどの人は本来生まれ持った才能を発揮できずに終わってしまう。
これは実に勿体ないことじゃないか。
もし、自分が幼い頃にこうなりたいと思っていたのに、いつしか、その夢を諦めてしまったのは、ほとんどの場合、この周囲からの決めつけ、「そんなことして生きていけるのか?」「そんなんで立派になれるのか?」「一流大学を出て一流企業に入らないとお金持ちにはなれない」「みんなと同じことをやらないと社会からはみ出すぞ」みたいな常識という脅迫に屈したからなのである。
本当は真逆で、これをはねのけ、意思を貫きとおした人が到達できるものが、自由だ。

自分流塾「自分らしく生きるために、常識から自由になれ」



生きる上で、いくつかの「常識」には、時に、従う必要がある。
しかし、世に言う「常識」のほとんどは、人間を封じ込めるために作られた手枷足枷に過ぎない。
常識を疑うことは、自分流を貫く上で、とっても大事なことだし、常識の過ちを見抜き、そこを突破出来た人間にしか到達できない自分らしさの境地というものが存在する。
なにがしかのパイオニアになるために必要なことであろう。
人間の可能性は無限にあるのに、人間たちが身動きを封じるために生み出した「常識」の鋳型に閉じ込められていては、本来の自分らしさを表出させることは難しい。
「この常識は本当に意味があるのか」と自分に問いかけることから、自分流というものは生まれる。
さぁ、問いかけをはじめてみよう。

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。