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自分流塾「個性を活かす前に、やるべきこと」 Posted on 2022/11/08 辻 仁成 作家 パリ

そもそも個性というのは何か、ちょっと考えてみよう。
人間に限ったことではないが、個性が備わったあるものが、それを持つことで他とは完全に区別されるようなもの、を「個性」と名付けることが出来る。
そのものに備わっている独特の本性のことだ。
それを人間に置き換えるならば「パーソナリティ」ということになるのかな。
個性とはその人物をその人物たらしめる特別な本性なのである。
あなたの個性とはあなただけが持った、決して、ほかの人にはない何か・・・。
必ずすべての人になにがしかの個性がある。
個性豊かだね、個性が強いね、と言われる人にはそれがたくさんあるということだろう。
あり過ぎて社会に適応できない人もいるかもしれない。
足りな過ぎて社会に埋もれてしまう人もいるだろう。
大事なことは、多くても少なくても、その個性を上手に際立たせ、その個性によって世の中に、しっかり認識されたり、周囲から一目置かれたり、社会に役だったり、人に好かれたり、面白がられたり、何か抜きんでる時の強いパワーに転換できるような、こと。

自分流塾「個性を活かす前に、やるべきこと」



じゃあ、どうやって個性を発揮するのか、ということだけど、その前に、まず大事なことは自分の個性をしっかりと理解することにある。
せっかく素晴らしい個性があるのに、その個性がわからなかったり、見つけられなかったり、そもそも気づかなかったり、もっとひどいことに、自分特有の個性を嫌う人までもいる。
個性というのは、他とは完全に区別されるようなものだから、ある人はそういう自分が他とは違うことで、その個性を嫌ったり、それを自分の悪いところ、欠点、と勘違いしたりする。実にもったいない話だ。
ぼくはだから、学生諸君には「それが君の個性じゃないか。そこを伸ばせばいいいんだよ」などと教えたりする。
すると「え、これが、ぼくの個性?」と驚く学生も多いのだ。
人とは違う本性なので、その個性のせいで自分が良く思われていないと勘違いして、そもそも個性を伸ばせない人が多いことにまず、気づかなければいけない。
逆を言えば、人から避けたい本性のようなものがあるなら、それが個性の芽である可能性もある。
個性というのはそのくらい、社会性の中で正反対のベクトルだったりするのだ、と思っておけばいい・・・。
なので、人から嫌われがちな個性というものも確かにある。
けれども、ようは、それを理解し、逆手に取ることが大事だ。まず、自分特有のパーソナリティを理解することからはじめてみよう。

自分流塾「個性を活かす前に、やるべきこと」



しかし、例をあげて、ここで解説することは、控えて置く。
というのは、個性とはこういうものでしょう、と言葉にしてしまうと、イメージを限定させてしまうからだ。
あらゆることが個性になりえるので、そこは超フラットな感覚で自分のことを率直に観察してみるのがいい。
あ、もしかして、この性格、これは私の個性なのかしら、と半ば、勘違いするというのか、とかく人に批判されがちだった性格をいかす方法を探してみることが必要・・・。これは自分の個性だから、と割り切ることも時には大事なのである。
もっとも個性とは「こうである」と特定しにくいのも事実だ。
そこらへんは厳密なものを探し求めない方がいい。アバウトに自分の個性を掴み、その能力を社会にコネクトさせていくような努力を積んだ時、その個性は、いつか、実を結んでいく。
ぼくの場合は、周りがいつも教えてくれた。
「辻君ってめっちゃ変わり者だよね」
と小学校の頃に言われてから今日まで、ほぼ、99%の人から「普通じゃない」とイメージのよくない烙印を押されてきた。
その都度、ぼくの面白いところは、それを「そうかぁ、それが俺の個性なんだよなぁ」と前向きに受け止めてきたことにある。
要は、この前向きに受け止める力こそが、ぼくの個性だったのかもしれない。
いろいろな個性が存在するので、その方法はそれぞれが見つけて育んでいくしかない。
でも、自分をしっかり知る時、その人特有の個性が出現するのである。



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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。