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自分流塾「後悔しないで死ぬことがしあわせなら、そのために今をどう生きる」 Posted on 2023/08/28 辻 仁成 作家 パリ

もちろん、お金は大事なんだけれども、お金持ちが全員幸せな最期をみんな迎えているかというと、そうでもない。
人間の欲望は果てしないので、どこで折り合いをつけるかが、まずは、とっても大事だと思う。
それ誰の人生だよ、とぼくは必ず自問している。
ぼくはいつの頃からか、過去と未来を一緒くたにするようになった。
どういうことか。
人間は過去に振り回されて生き続ける動物であり、とかく、過去が苦しければ未来に期待をしてしまう。
でも、過去は過ぎ去ったものであり、未来はまだ知らない世界なので、ここにばかり囚われるから、苦しいのも当たりまえ。
時間という概念はそもそも誰が作った? 
時計が発明される前に、人間が、時間を不可逆的なものと決めつけたので、一方向にしか向いていない。でも、それをとっぱらうとどうなるのか。
過去と未来は、たとえば、昨日と明日は、それぞれ、今この瞬間から一日離れた同じ場所にある、と考えてみては?
過去も、未来も、今ではないのだから。
すると、ぼくはこの両方、つまり過去と未来にずっと引っ掻き回されて生きてきたことに気が付いてしまった。
過去を後悔し続けて、今を暗くなるのは愚かなことである。
未来を不安がって今を生きるのも、実に勿体ない話しである。
そこで、ぼくは人間には過去も未来もなく、つねに「今」もしくは「今日」の中で生き続けているのだ、と考えるよう心掛けてきた。
ここで何度も書いてきた通り、見回してみてほしい、あなたの周囲に「死を経験した人はいるだろうか?」
どんな偉人も大統領も生きている者であれば、死を個人的に経験した者はいない。

自分流塾「後悔しないで死ぬことがしあわせなら、そのために今をどう生きる」



逆を言えば、80億人の人類は、誰ひとり、自分の死を目撃も経験もしていないのだ。(臨死体験はおいといてください。あれは脳の悪戯ですから)
そこを突き詰めると、人間は死ぬ間際まで生きるし、それ以降を知らないのだから、生きている間だけの、人生ということになり、生きている間はじつは、無限なのだ、ということもわかるでしょう。
そんなことはない、Aさんは死んだし、死んだ時の辛さをぼくは知っている、という人も多いだろう。
でも、自分が経験することはないから、それは神様が用意したあなたを構成する世界の出来事なのである。
もっとも大事な世界なのだけれど、あなたは、まだ、死んではいない。
あなたは自分が死んだ時のことをBさんとなって目撃することはない。
ぼくはそういうことに気が付いたので、自分の中から「死」という出口は消えた。
永遠の現在の中にいる、ということを自覚しはじめ、考え方が変わったのだ。
過去は過ぎたので、悩んでもしょうがないが、今を必死で頑張ると、過去の評価は変化する。不思議なくらいに、過去は今の影響下にあるということだ。
未来も、実は、今を頑張ると、よくなったりする。同じく、今の影響下にある。
つまり、過去と未来は、今次第ということになり、今、この瞬間、の中に過去と未来は含まれている、と思ってもよいだろう。
なので、拭い去れない後悔があるのであれば、今から後悔を減らし消し去るように動くのがいいだろう。
未来が不安であるならば、今すぐ、予想される出来事をイメージして前進すればいいのだ。
すると、未来も過去も変化する。
人間は、もちろん、人それぞれだけれど、人生と折り合いを最後につけられたら、幸せ、だと思うべきだ。
その折り合い方は人間の数だけあるのだけれど、難しいことではない。
こういうことを心にイメージして、とにかく、今がこの世界、この人生の全てだと思っている時、過去にも、未来にも振り回されなくなる。
だから、今、この「今この瞬間」を切に生きることが大事だということ。
はい、じゃあ、また次回に。

自分流塾「後悔しないで死ぬことがしあわせなら、そのために今をどう生きる」



ぼくは最近、口癖が「期待してない」なんですね。ほんと、これは便利で、どっち転んでも自分を救ってくれます。「過去は関係ない」もよく言うかな。いい思い出は大切にしまっておけばいいですね。苦しい過去は、蓋をして暫く開ける必要はありません。今を、大切に生きてください。もったいないですよ、今が全てなんですから・・・。

自分流塾「後悔しないで死ぬことがしあわせなら、そのために今をどう生きる」

自分流×帝京大学



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8月29日、名古屋ダイヤモンドホールでのライブ(完売)
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9月3日、京都劇場でライブ(完売)
9月1日、辻村(tsujiville)開村
9月16日、NHKBS、新作「パリごはんSP」その一週間前から連日過去作一挙再放送。
10月23日、英国、ロンドン、ケンブリッジ劇場にてライブ
2024年2月末、伊勢丹アートギャラリーにて絵画初個展「les invisible」開催。

●「ボンジュール!辻仁成の春のパリごはん」
【BSP】9月11日(月)午前6:15~7:14
※初回放送 2021年6月18日

●「ボンジュール!辻仁成の秋のパリごはん」
【BSP】9月12日(火)午前6:15~7:14
※初回放送 2021年10月30日

●「ボンジュール!辻仁成の冬のパリごはん」
【BSP】9月13日(水)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年2月23日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022春」
【BSP】9月14日(木)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年6月17日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022夏」
【BSP】9月15日(金)午前6:15~7:14
※初回放送 2022年9月23日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2022秋冬」
【BSP】9月16日(土)午後1:00~1:59
※初回放送 2023年2月17日

●「ボンジュール!辻仁成のパリごはん 2023春」
【BSP/BS4K】 「パリごはん2023SP」(9/16土曜20:00~21:29)
今回が、初回放送になる、新作です!!!!!

posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。