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自分流・日々のことば「怒ったら負け」 Posted on 2025/05/23 辻 仁成 作家 パリ

毎日、おつかれさまです。
ぼくも日々、いろいろなことを抱えてなんとか生きています。
頭にくることがあります。
他人というのは、他人ですから、不意に不条理なことを言ってきたり、問題を投げつけて、人の人生に割り込んでくるわけです。
そういう時、怒りが先に出がちですが、ここで、テーブルをひっくり返して、失敗をしてきたのが今までのぼくの人生でした。
怒ったっていいじゃないか、と思われるのも当然です。
でも、一瞬、怒らず、冷静になって(顔を氷の微笑みたいにして)、相手が何を言っているのか、何が起き、どういう状況か、を判断することがとっても大事だったりするわけです。
ほんの数分我慢してみる、でもいいですし、様子を見るのに、一日かかっても結構です。
すぐに怒りにまかせて、怒ると、損をするのは、結局、自分なんです。

自分流・日々のことば「怒ったら負け」



ぼくは最近、よく堪えられるようになってきました。
不条理だな、と思いますが、その怒りを一度、上手に飲み込んで、態勢を整えなおしてから、打つ、次の手は、よく考え抜かれただけに、有効、となります。
喧嘩を売られて、買い言葉に売り言葉だけでは、本当の人間関係がうまくいかない場合もあるし、周辺に浅くみられる可能性もあります。だから、ちょっとだけ、冷静になるんです。
相手のスキを見つけて、構え直せば、流れを変えることが出来るはずです。
もちろん、人生は勝ち負けではありません。
だからこそ、冷静さが必要になります。
その上で、こりゃあ、まったく話が通じない、これ以上は冷静になれないと判断をしたら、踵を返し、そこを去ればいいんです。
もう、関わる必要はないでしょう。揉めるのもばからしい。
ぼくはよく人生の修羅場で、こう自分に言い聞かせます。
「怒ったら負けだよ」
と。
よし、泰然とまいりましょう。
よい一日になりますように。

自分流・日々のことば「怒ったら負け」

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TSUJI VILLE

posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。