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学び直す人生1「人間っていったい何歳まで学ぶことが出来るのだろう」 Posted on 2020/07/21 辻 仁成 作家 パリ

会社をやめて大学に通いだした友人が何人かいる。退職したあと暫く家でぼうっとしていたのだけど、これじゃ頭が鈍ると言い出し、再び学校に通って勉強をし始めた先輩を知っている。会社は辞めないまでも、どうも今の仕事が自分の天職じゃないのじゃないか、と気づいて仕事をしながら学校で勉強を始め直した人がいる。主婦を続けていたけどこのままじゃ何も変わらないと一念発起し大学に通い出したお母さんを知っている。芸能人でも大学で学び直している人が結構多い。こういう人が増えているし、未だ、行動は起こしてないけれど、近い将来、学び直してみたいと思っている人が増えているのは確かなようだ。

学び直す人生1「人間っていったい何歳まで学ぶことが出来るのだろう」



そもそも、学ぶことは人間にとって一生続けないとならないことなのに、学習は大学までで終わるという世の中の固定概念がもう時代遅れも甚だしい。39歳の会社員の友人が、彼は大手広告代理店に勤めているのだけど、働きながら、専門職の学校に通っている。将来、やりがいのある自分に適した仕事に移りたいので技術を学んでいるんだ、と言った。ぼくの父親は日本でも最初の頃に出来た火災保険会社で働いていたけど、エリートだったそうだが、社内政争に敗れて後半の人生は窓際族だった。その時、ぼくに言った言葉が忘れらない。
「ひとなり、手に職を付けるんだ。学んで知識を持つんだ。人生は一つじゃないんだ。固執しちゃだめなんだ、これからは広く世界を見て、知識を得よ」

学び直す人生1「人間っていったい何歳まで学ぶことが出来るのだろう」

生涯教育という言葉があるけれど、言葉はキャッチコピーみたいなものだからとりあえず置いといて、人生百年とか言われていて、人間はものすごく長生きをするようになって、定年が60歳くらいで訪れた後、残りが40年もまだあることに気づき愕然とすることもある。そうなるのだから、若いうちから、なんとなく、定年後のことを考えておいた方がいい。それ以前に、繰り返しの刺激のない一生をただ時間潰しのように生きるのはもったいない。人間は一生考えてないと頭が退化してボケやすくなる。真剣に学んでいないと、衰えも早くなる。

人間の中にある好奇心こそ、実は人生を豊かにする一番のエネルギーなのである。そこを生かさない手はない。そこで、ぼくは、自分の中に幼い頃からある「人間とはなんぞや」という漠然とした謎解きのために4年前、このDesign Storiesをはじめた。その時、若い芸術家たちを支援する芸術の賞を作りたいと思い新世代賞も生まれたのだけど、もう一つこのプラットホームをベースにいつか創設したいと思っていたのが地球芸術大学だった。芸術といっても理論や技術を教えいわゆる芸大じゃなく、人生をデザインする学校のことである。

学び直す人生1「人間っていったい何歳まで学ぶことが出来るのだろう」



実はこの4年間、ぼくはずっと大学を作りたいと周囲に言いふらしてきた。何度も企画書を書いて、大学の仕組みなどを学んだり、いろいろな人と議論を重ねてきた。そして、気が付くと、有志が集まっていた。「人間とはなんぞや」というこの壮大な謎をあかすために、いつの頃からか、ぼくは大学を作ることを心に誓っていた。けれども、その構想はあまりに大きすぎて、はい、そうですか、というわけにはいかない。でも、イメージすることが何事も大事である。今は多くの仲間を集め、意見を聞いている。自分もそこで学びたいと思った。

人間は一度しか生きることができない。でも、世界中には実に人生を有意義に哲学的にコツコツと花を育てるような時間の流れの中でしっかりと紡いでいる人が大勢いる。ぼくは世界中を旅しながら、そういう人たちに出会っていった。有名無名関係なく、彼ら、彼女らから学ぶことは本当に大きかった。そこには教科書なんてない。生きてきた歴史が教材だった。「面白いな人間とは」と思いながらぼくは大勢の意見から、その人生から、いろいろなことを学ぶことになった。

学び直す人生1「人間っていったい何歳まで学ぶことが出来るのだろう」

大学というのはいわゆる教育界の大学じゃなく、大人が真剣に人生を学ぶ場所を大学と呼ぶのであれば、そういう大学をこそ、今、創らないとならない、とぼくは思ったのだ。まず、今日のところはその小さな決意表明である。「そうだ、私も何かを学びたいのだ、この長い人生の中で」とここまで読んで思われた方はぜひこの続きを待っていてほしい。

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posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。