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自分流塾「くよくよしている暇などない、気分を変える号令で日々を乗り切る!」 Posted on 2024/01/17 辻 仁成 作家 パリ

困難はどうして次々に押し寄せてくるのか、ちょっと考えてみよう。
困難のない人生などはない。
じゃあ、困難とは何か、それは、人間を前進させるためのものなのだ。
困難は生きている限りなくならないものであり、それは次々にやって来る。
そこでぼくはある時、うんざりしたのだ。
なんで、こんなに困難ばかりがぼくのところにはやってくるのだろうって。
もちろん、困難を招いているのはぼく自身なのだけど、これには何か意味があるに違いないと思うようになった。
頭上からよく困難がふりかかってくる。
でも、ぼくはそれを乗り越えた。たぶん、乗り越えたと思う。
落選したり、ふられたり、にっちもさっちもいかなくなったり、停滞したり、気力がどん底に落ちたり、単純に失敗をしたり・・・。
でも、こういう困難は乗り越えられることがだんだんわかって来た。
まず、困難というものには必ずチャンスが眠っているのだ、と気づいたことが大きい。
困難に押しつぶされる時は困難の中にチャンスを見つけられない時に他ならない。
困難の中に、大きな前進の可能性が眠っている、もしもこの困難を乗り越えられたら、ぼくは次へ進む大きなステップを手に入れることが出来るんだから、となぜ思わない?
その時、ぼくはこう自分に言い聞かせる。
「はい、次!」

自分流塾「くよくよしている暇などない、気分を変える号令で日々を乗り切る!」



そもそも、困難に押しつぶされる時のぼくはその困難を受け止めすぎる傾向にあった。
もうだめだ、と考えがちだった。そんな時間はもったいない、と思うようになり、これは失敗したんだから、いつまでも腐ったものを持っていてももっと腐るだけだ、はい、次!
とスパッと切り捨てることをやる、つまり、言葉にしてみたらいいんだ。
「はい、次!」

自分流塾「くよくよしている暇などない、気分を変える号令で日々を乗り切る!」



困難の中にこそ、次へ向かう原動力が眠っている。
困難が実は人間を大きくさせていく起爆剤になるのである。
つまり、困難がやって来た時に、飲み込まれる人とその波を利用してサーフィンが出来る人とに分かれるのだけれど、なかなか人はその荒波を黄金の波に変えることが出来ないのが普通で、そのままあたふた溺れてしまうのである。
それが普通だと思った時点で、実は普通に舐められている。
常識なんてものは、若い頃に人間を鋳型にはめるための道具に過ぎない。
常識ほど恐ろしいものはないのだ。
常識から逃げられなくなったらおしまいなんだ。常識を突き破れ!
常識を常に疑うこと。出来ないじゃなく、自分の限界を開放させることが大事だ。
そのために、困難をどんどん利用していかないとならない。
困難こそが、人間を大きくさせる一番の滑走路に他ならないからである。
「はい、次!」
やって来る困難を次々にかわして、捌いて、すり抜けていけば、思ったよりも遠くへ人間というものは行くことが出来る。
ぐずぐず悩んでもしょうがない。失敗は必ず成功への布石となる。絶望の中にこそチャンスが無限に眠っているじゃないか。
落ち込んでいる時間がもったいないだけだ。
「はい、次! 何をぐずぐずしているんだ、時間がもったいない。落ち込んでも一生、立ち直っても一生なんだから、どんどん、次へ向かおうじゃないか」
これでいいのである!
「はい、次!」

自分流×帝京大学

自分流塾「くよくよしている暇などない、気分を変える号令で日々を乗り切る!」

TSUJI VILLE



posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。