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パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」 Posted on 2025/06/23 Design Stories  

 
無料で見学できる、パリのひそやかな美術館をご紹介したい。マレ地区の路地裏に位置する「コニャック=ジェイ美術館(Musée Cognacq-Jay)」だ。あまり聞き慣れない名前かもしれないが、この場所では、18世紀の貴族たちの華やかな暮らしぶりを見学することができる。
 

パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」



 
入場無料、予約も不要ということで、ふらっと立ち寄れるコニャック・ジェイ美術館。ファッションとアートが行き交う街、マレを散策する日の一選択肢としておすすめだ。春夏シーズンには中庭のカフェもオープンしているので、暑い日に涼をとる場所としても良い。
 

パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」

※入ってすぐのところにある中庭カフェ

パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」

 
コニャック=ジェイ美術館には、当時の貴族たちが愛した美術品、家具、陶磁器などが並んでいる。これらコレクションはパリの老舗百貨店「ラ・サマリテーヌ」の創業者、エルネスト・コニャックと、その妻マリー=ルイーズ・ジェイが生涯をかけて集めたもの。夫妻の没後はパリ市に寄贈され、現在は美術館として一般公開されている。
 

パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」

※エルネスト・コニャック、マリー=ルイーズ・ジェイ夫妻



パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」

 
まるで、貴族の屋敷に招待されたような気分になる館内。上品で、部屋ごとに少しずつ趣向が異なっていて、奥行きとゆとりある配置がとても印象的だった。
そのコレクションには、フラゴナール、ワトー、フードン、レンブラントといった巨匠たちの作品が含まれている。展示の中には、ドイツ・マイセン製の珍しい磁器や陶器もあった。こうした磁器をコレクションすることが、18世紀ヨーロッパ貴族の象徴だったという。
コニャック=ジェイ美術館ではこのように、現代とは少し違う、当時の美意識に触れることができる。
 

パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」

 
18世紀は、フランス革命(1789年)やマリー・アントワネットの時代でもあり、貴族文化がもっとも華やかだった時代だ。美術館の内部そのものもまた、一つの芸術作品のようで本当に美しい。
とくに貴族のサロン(客間)を再現した2階の部屋は、訪れた人に「貴族体験」を与える重厚な演出になっている。エルネスト・コニャックは、美に対する自らの嗜好と情熱を、できるだけ多くの人と分かち合いたいと願っていたそうだ。
 

パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」

※2階のサロン



 
そんなコニャック=ジェイ美術館は大通りから少し奥まった場所にあるせいか、観光客でごった返す雰囲気とは無縁かもしれない。
派手さを排した上品さは、静かにアートを味わいたい大人にこそよく似合う。展示のクオリティや内部の豊かな空間を思えば、「贅沢」という言葉がこの美術館にふさわしいのではないだろうか。
 

パリ・アート情報「マレ散歩の寄り道に。コニャック=ジェイ美術館」

 
なお、常設展は無料だが、年に数回開催される企画展は有料になっている。所要時間はゆっくり見てまわっても1時間ほど。マニアックかつ、パリならではのコレクターズ・ミュージアムとして一度は訪れてみたい。(る)

【コニャック=ジェイ美術館(Musée Cognacq-Jay)】

住所:8 Rue Elzévir, 75003 Paris
開館時間:火〜日曜 10:00〜18:00(毎週月曜、1月1日、5月1日、12月25日休館)
最寄駅:メトロ8番線「Chemin Vert」または1番線「Saint-Paul」
公式ホームページ:www.museecognacqjay.paris.fr
 

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