ノルマンディ、ツジ村便り
辻村相談窓口、「時間がないという人生」 Posted on 2026/10/08 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
さて、さっそく相談窓口を開くことにいたします。
☆
匿名希望Kさん
「辻さん、忙しくて、時間がありません。本当に時間がないんです。先日、嫁に怒られました。あなたは忙しすぎるって・・・。だから、辻さんのブログも毎日、読めない。コンサートにもいけない。本も買えません。こんな僕にアドバイスをください」

おこたえしまーす。
☆
「実はたまたま昨日のことなんですが、とある仕事関係の方から、『時間がありません。忙しいんです。また今度連絡します。取り急ぎ』というメールが来たんですが、びっくりしました。この人から仕事を依頼されて、ちょっと先々のことで相談をしたら、これです。この『取り急ぎ』という捨て台詞もおかしくないですか? 忙しいのは、あなたの勝手だけれど、取り急ぎで、ぼくのことを片づけるなよ、と思いました。あはは、笑っちゃいますよね。こういう余裕のない人が最近、多くて、何に対して時間がない、忙しい、んだろうと、首を傾げざるをえません。この人と仕事をしてもぼくが幸せになることはないような気がしたので、この人との仕事はまもなくやめるつもりです。確かに忙しいのだろうとは思いますが、そういう時に、忙しぶるのじゃなく、自分の時間をとめて、一度、周囲を見回せる余裕が欲しいですよね? そういう人じゃないと一緒に仕事はできないですよ。ぼくはAIじゃないんだし、心と魂があるからです。
☆
ぼくが田舎暮らしを選んだのは、こういうある意味喧しい人生から遠ざかりたかったからに他なりません。ちょっと落ち着いたらどうなんだい、と言いたくなります。急ぐから、どんどん時間が失われていく錯覚に陥ってることに気づかないのじゃないでしょうか。忙しいという漢字の部分は(忙)ですが、(心)+(忘)から成り立っています。忙の部首はりっしんべんですね、これは、心のことです。心を忘れるくらい忙しい、という流れから生まれた、とされていますが、(諸説あり)、心が亡くなるくらいあれこち追い掛け回されて忙しい、ということなんです。つまり、本来の心を失っている状態、ですね。この仕事相手の人は「忙しい」と自分のことを説明していますが、いいですか、忙しすぎると、目の前のものを見る心の余裕がなくなり、人の話を聞く余裕もなくなり、自分を見つめる余裕さえもついでに消え失せてしまう、というわけです。だから、メールの最後に、『取り急ぎ』という大変失礼な一言を書いて、自分が忙しいから、相手が出来ない、と言ったりするわけですね。取り急ぎという言葉は、まことに、失礼な言葉ですから、使う時はくれぐれも気を付けてください。ないがしろにされた、と感じる人もいるんですよね。
☆
忘却の(忘)も心を亡くすと書きます。心を亡くすから忘れるんです。心を亡くして忙しくなり、心を亡くして忘れる。そうやって大事なものや人を失うわけです。だから、ぼくは『忙しい、忙しい』とは言わないことを心に決めています。
「辻さん、忙しいですよね?」
と言われると、
「なーんも、ぜんぜん、暇です」
とこたえます。自分には時間がある、と思う方が、時間がない、と思うよりもうんと幸福な気がしませんか? そう思うだけで、何か、世界が開けたような感じになるものです。あなたもぜひ、真似してみてください。
心の持ちよう一つで、人生というのはがらっと変わりますよ。
では、皆さん、ご一緒に、小さな声でえいえいおー。


父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
毎日、仕事場から目の前にそびえる高木を見ています。心が落ち着きます。朝は、おはようございます、とあいさつをしています。なんか、ぼくと三四郎を見守ってくれているような気がしてなりません。落ち着いた世界で、ゆっくりと生きています。
さて、そこから配信している「となりのヒトナリ」ですが、来週、再来週は日本なので、日本からの配信になります。料理はちょっとおやすみして、仕事現場から中継しますね・・・。ふふふ。
安東美術館でのライブですが、藤田嗣治の絵に囲まれて歌うんですよね、すごいですね、楽しみでなりません。18日、晴れるといいな~。
リヨンですが、絵は全部で25点になりました。タイトルは「見えないものたち」になります。リヨンの人たちにどう響くのか、楽しみですねー。ベルニサージュは、11月4日の夕刻からだそうで、ぼくもちらっと顔を出しますので、どうぞ。珍しくご挨拶をさせていただきます。会場は、6 rue de Vauzelles 69001 Lyon になります。「La petite Galerie」という看板が出ていますが、宿無しノマド画廊の48さんがそこを借りて、ぼくの個展が開催されますので、住所、ご注意ください。
パリは、10月22日から25日まで、コンコルド広場の特設会場で開催される「モダンアートフェア」に初参加します。12作品が並びますよー。こっちも、えいえいおー。
下の辻ギャラリーサイト内の、エクスビジョンコーナーに、先の三越個展の雰囲気動画が埋め込まれましたよ。
☟




