自分流・日々のことば
日々のことば、「自分を疲れさせるな」 Posted on 2026/11/08 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
さて、今日は信念が異常に強いフランス人マダム、アリスさんと左岸のカフェで会ってお茶をしました。
ぼくの絵の理解者で、ぼくの絵もいくつか持っています。
この人は78歳なんですが、世界中を飛び回っているのです。
もともと、旅行会社を経営なさっていたこともあり、今はリタイアをされ、ご主人と世界中を旅する日々を楽しまれているのです。
ぼくもかなりハードな移動をしておりますが、この方は一年中、休むことなく、旅を続けています。それが仕事でもあり、それが趣味でもあり、生き甲斐でもあるようです。
「お疲れじゃないですか?」
席に着いた瞬間に、ぼくがそのようなことを言いましたら、
「やめてよ、ひとなりさん。私にそういう言葉は言わないで!」
と言い返されてしまいました。え? 気遣って言ったのに、どういうこと?
「だから、疲れたという言葉を、私は死んでも口にしないのよ」
「なんで?」
「なんで、いい質問ね、人間は、疲れた、と口にしたら負けだから。わかる? その言葉こそが私を疲れさせるのよ」
「は?」
なるほど・・・。

アリスさんの言っている意味がわかりました。
たしかに、ぼくもそうですが、「疲れた~」というのが口癖です。ぼくくらいの年齢になると、皆さん、ちょっとしたことで、すぐに「疲れたー」とこぼしておられますね。
でも、その言葉を口にすると、その言葉を聞いている自分=身体も疲れてしまう、というのがアリスさんの考え方なんです。
「でしょ? ひとなりさん。疲れた疲れたって言ってる人って、もう世界に負けている人なのよ。そこに加わりたくないの。疲れたと認めた瞬間に人間は疲れた人間になってしまうんだから、私にその言葉は必要ありません」
おおお、なんて、意思の強い人なんだろう、と思いました。
このご夫婦、この12月に、日本縦断の旅をやります。
東京から九州へ行き、鹿児島から福岡までご主人と二人でレンタカーで各県をめぐりながら北上し、新幹線で広島へ行き、そこから直島へ渡り、そこから大阪へ行き、そこから高山に行き、そこから金沢に行き、そこから奈良へ行き、最後、関空からフランスに戻る3週間の「人生最後の日本旅」に出るのだそうですが、78歳のご夫婦ですよ・・・。
お正月は大阪で過ごすのだそうで、もし見かけたら、よろしく、です。あはは。
「ひとなりさん、疲れたって言葉は禁物です。疲れた、と口に出したら負けなのよ。言葉は気を付けて使いましょう」
たしかに、いい勉強になりました。
ぼくもアリスさんを見習い、「疲れた」口癖を廃止したいと思います。
はい、小さな声で、えいえいおー。

父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
リヨンの個展主催者さんから、うれしいニュースですよ。
☟
ウェブニュースのLe Petit Bulletin Lyonが、「11月にリヨンとその周辺で見るべき10の展覧会」という記事のなかに、今回の展覧会を取り上げてくれました。Le petit bulletinはリヨンの文化、芸術、エンターテイメントを専門に扱う地域情報雑誌です。リヨンの文化好きが読む情報誌なのだそうです。
気になる皆さん、こちらをクリックしてみてください。
https://www.petit-bulletin.fr/article-81162-le-loquence-des-choses-muettes-dix-expositions-d-couvrir-en-novembre-lyon-et-alentour.html
☆
今日は、パリのライブハウス、カフェ・ド・ラ・ダンスでライブです。ぼくの出番は20時から、チケットは売り切れているかもしれませんので、チェックしてからお越しください。昨日の段階で、残り数枚でした。
また、ライブの反響は、明日にでも、報告します。えいえいおー。


posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。


