自分流・日々のことば
日々のことば、「新境地」 Posted on 2026/10/07 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
さて、日々のことばですが、最近、とくにぼく自身、自分に言い聞かせているこのことばを皆さんと分かち合いたいと思います。
それは、
「新境地を開く」
です。
よく聞くことばですが、新境地とは「今までに到達したことのなかった新しい状態」のことを言います。
「新境地を開く」とは、ですから、これまでの自分には未知だった世界や可能性へと踏み出す、ということになりますかね。
英語だと、break new ground、かな。新しいグラウンドを開拓するって、いい響きですよね。
ぼくはつねに自分の中の新しい扉を開くことを人生の喜びとしてきたし、目指してきました。それは自分の中で満足していたルーティーン的な古い殻を破ることだったりします。そして、これまでにない自分に出会う、ということ。
これは人生を数倍楽しくさせる唯一の方法だと思うのです。
☆
ぼくはいつも、このブログで、「小さな目標をかかげて、まずは、そこを目指して、こつこつ、前進しましょう」と語ってきました。
しかし、新境地を開拓するなら、この方法だけでは足りません。独特の方法が必要となるのです!
キラッ。

その達成には、「小さな目標」と「大きな目標」の二本立てが必要となります。
小さな目標は「電柱作戦」と名付けられたもので、日々を丁寧に生きながら、人生を見失わず前進させるのに必要な鉄則で、これがぼくの基本姿勢だったりします。
しかし、新境地を築きたい、と思う時にはこれだけだとなかなか新境地までは到達できません。
新境地を生み出す時には、だいたんな行動が必要となります。そこで、「小さな目標」を基本軸におきながら、もう一方で、「大きな目標」を高々と掲げるわけです。
二足の草鞋のような効果があります。
大きな目標を掲げたことで、遠くにゴールが出来ます。一歩一歩進みながらも、遠方に大きな目標があることで、ぐいぐいと現在を引き上げてもらえるわけですからね・・・。
これは、しょっちゅうやると疲れますから、ここぞという時にやることで、効果がえられるんですよね。
ちょっとぼくのことになりますが、聞いてください。
音楽活動で行き詰った時、ぼくは、今まで経験したことがなかった「リードギタリスト」という新分野への挑戦を始めました。何年前かな、10年弱、前から、意識をしはじめました。
ボーカリストだけじゃなく、ギターリストとしても活躍できれば、一粒で二度おいしいアーティストになれると思ったからです。
でも、簡単ではありません。ごまんとギタリストがいますからね、プロの世界には・・・。
そこで、10年前から、スパニッシュギターをはじめました。毎日、運指の練習をし、早引きができるようにコツコツ訓練したんです。
ラベルが作曲した名曲「ボレロ」をギター一本で演奏したい、という夢を持ちました。
で、ちょっと上達してきたので、7年くらい前から、アレンジと練習を開始しました。
そして、5年前、コロナ禍ちょっと前に、動画を撮影し、ユーチューブにアップしたんです。
お恥ずかしい出来栄えでしたが、これが原点です。
そして、だんだん、上達してきましてね、「歌う詩人」ではリードギタリストを担当しています。
新境地なんです。
毎日の指の訓練は「小さな目標」、そして、「大きな目標」はオリジナリティ満載のギタリストになること、でした。
「歌う詩人」のファーストアルバムでは、5分近いリードギターを弾いています。毎日、1時間は訓練をし続けた10年間の成果だといえるでしょう。
え? そんなの自慢にならない?
ま、そうですけれど、ぼく的には、こうやって、新しい自分を発見することを喜びにしているので、これでいいんです。
どうぞ、5年前に撮影した、未熟なボレロを聞いてください。これは、その時のぼくの間違いなく新境地でした。そして、今へとつながります。
「大きな目標」はスイスのモントルージャズフェスティバルに出演をして、目の肥えた観客を前に、リードギターを演奏すること、あはは! しょってるな。
ま、しかし、一点の恥じることもないですな。
「新境地を切り開け」
はい、小さな声で、今日も、えいえいおー!
☆
ボレロは、こちらのURLをクリックしてね。
☟
https://youtu.be/VJl3jFR3eJw
おっと、こちらも、父ちゃんの新境地、なり。

posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



