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パリ最新情報「買い物を快適に。『サイレントアワー』がパリで始まる」 Posted on 2022/04/06 Design Stories  

4月5日、パリ中心部にある大型ショッピングセンター「フォーラム・デ・アール(Forum des Halles)」がサイレントアワーの導入を始めた。
これは毎週火曜日の午前10時から11時のあいだ、施設内から音を一切なくし、お客様に快適に過ごしてもらおうという試みである。

フォーラム・デ・アールは、パリ1区の主要駅、シャトレに直結するショッピングセンター。
ファッション、コスメ、インテリアショップ、電化製品など、100ブランド以上のショップが入るほか、プールや映画館も併設する。
その圧倒的な存在感、利便性でパリの人々にもよく知られる場所となっている。

パリ最新情報「買い物を快適に。『サイレントアワー』がパリで始まる」



ではサイレントアワーとは、具体的にどのようなものなのだろうか。
まず、店内BGMが完全に消されるほか、館内アナウンスがオフになる(緊急時を除く)。
またこの時間に限り清掃機の使用、台車での搬入、店舗における防犯ゲートのブザーなども停止され、照明は通常の半分ほどに落とされる。

と、かなり徹底した対策なのだが、これは「聴覚過敏」の人、特に自閉症スペクトラム障害を持つ人々への配慮から始まったという。
イル・ド・フランス地方(パリ市を含む首都圏)に複数のショッピングセンターを所有するウェストフィールド・グループが実施を決定した。

サイレントアワーはエッフェル塔近くのボーグルネル・ショッピングセンターでも1月から導入されており、パリでは2番目となる。

パリ最新情報「買い物を快適に。『サイレントアワー』がパリで始まる」



実際に訪れてみると、これが驚くほど快適なのである。
駅近のショッピングモールでは人々の行き来が激しく、大音量のBGMが流れていて、便利ではあるもののしばしば「早く出たい」と思ってしまう。
ところが音がなくなったことによって、空間をいつもより広く感じることができた。

店員さんや、自身の声もスムーズに通るのでストレスがない。
特に聴覚過敏でない人も快適に感じるのだから、敏感な人にとってはとてもありがたい試みなのではないかと思った。
これは地元パリジャンも同意見のようで、「とても良い考え」「毎朝開催したらどうか」といったコメントがウェストフィールド公式アカウントに寄せられている。

パリ最新情報「買い物を快適に。『サイレントアワー』がパリで始まる」

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実はこのサイレントアワーは、フランスではカルフールなどの大手スーパーマーケットチェーンでも採用が進んでいる。
仏国内で初めて導入されたのが2019年。イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダでも行われており、フランスがそれに続いた。

目的は同じく聴覚過敏の人々に配慮したもので、障害を持つ人々を積極的に雇用するカルフールでは、昨年からサイレントアワーを全国1240店舗で展開している。
顧客からの評判はとても良く、今後数ヶ月のうちに面積1000㎡以上の大型店すべてが参加する見通しだという。

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こうしたサイレントアワーのことを、フランスの人々は「ZEN」とも呼んでいる。
日本の「禅」を意味するのだが、フランス語でもそのまま使われており、心を動揺させないための瞑想メソッドとして親しまれている。
それが今、パリのお買い物シーンでも広まりつつあるのだ。

「このアプローチは、障害の有無に関わらず、すべてのお客様に有益だと確信しています。都会のストレスと騒音から解放されるひとときを」とフォーラム・デ・アーレは述べている。
確かに、音にもメリット・デメリットがある。今回のサイレントアワーは、都会の盲点をついたナイスアイデアだと思った。(ル)

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