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パリ最新情報「寒波襲来中のパリ、避難所を増設。フランスの避難先とその実態とは」 Posted on 2024/01/10 Design Stories  

 
1月8日および9日、フランスは内陸部を中心に厳しい寒さに見舞われ、首都パリでも1日中氷点下の真冬日となった。
この寒波はシベリアから来ており、「モスクワ・パリ(Moscou-Paris)」現象と呼ばれる。
過去にはもっと強烈な寒波を引き起こしたこともあり、欧州では路上生活者を中心に死者が相次ぐ事態となった。

こうした凍死者を防ぐため、イル・ド・フランス圏(パリ首都圏)は「寒波対策」を8日夜に発動した。
寒波対策(le plan grand froid)とは、11月1日から3月31日の間に気温が下がりすぎた場合に、フランスの各県が発動する緊急条例である。
※対策には気温の低さによって三段階のレベルがあるが、今回はそのうちの二番目にあたる。
具体的な目的は、このような寒波の際に、最も弱い立場にある人々のために緊急避難所を提供すること。
さらに避難所の開設や増設だけでなく、食糧支援活動の強化、警察や地域職員の動員なども含まれる。
 

パリ最新情報「寒波襲来中のパリ、避難所を増設。フランスの避難先とその実態とは」



 
パリ首都圏の緊急避難所は主に、空き校舎(旧中学校・高校)、体育館(学校附属ではなく市営のもの)、使用されていない公営施設や一部の空き家となる。
今回は12月21日からすでに開設されている避難所に加え、274カ所の避難所が設けられたということだ。
また274カ所の避難所のうち、子ども同伴または独身女性向けの施設は50カ所、独身男性向けの施設は50カ所になった。
なお避難所では簡易ベッドが設置されているほか、あたたかい食事の配給なども行われる。
(ペットと一緒の避難は場所により可能)
対象者は主に路上生活者で、国籍は問わない。
場所によってはフランス語講座を設ける避難所もある。
 

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※今回増設された避難所の体育館(市営)。



 
フランスの特徴として、こうした人々を救うため、慈善事業団体が一丸となって救助活動を行う、というシステムがある。
自発的に避難所入りすることができない路上生活者に対し、ボランティアスタッフが一人ひとりに声掛けを行い、避難するよう説得して回るのだ。
パリ市内では同様の試みが緊急時以外でも行われているのだが、23年では路上で寝泊りする人の数が3,000人以上(うち未成年105人)にもなった。
この数字は年々増えており、子どもの路上生活者にいたっては特に増加傾向にあるという。

一方でパリ市議会は、避難所の数が不十分だとして、市内の空き家を緊急避難先として徴発するよう求める嘆願書を仏政府に提出している。
寒波以外の有事の際でも使用できるようにするためだ。
例えばパリでは、ウクライナ危機勃発の際に多くの空き家が避難民向けに提供された。
ただほとんどは所有者の同意が必要なため、パリ市は空き家を「公共のAirbnb※」などとしながら、柔軟な解決策を打ち出したいとしている。
※Airbnb…エアービーアンドビー。一般の民家やマンションの空き部屋を旅行者に貸し出すウェブサービス。
 

パリ最新情報「寒波襲来中のパリ、避難所を増設。フランスの避難先とその実態とは」



パリ最新情報「寒波襲来中のパリ、避難所を増設。フランスの避難先とその実態とは」

 
フランスではパンデミックに続き、インフレや不安定な社会情勢で、屋外で生活する人の数が増え続けている。
これはフランスのありのままを写し取った現実として、大きな社会問題にもなっている。
それ故、今回のような避難所の新設・増設およびボランティア活動は、これからも各都市で増えていくと想像される。(チ)
 

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