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パリ最新情報「フランスにも現れた、匿名のあしながおじさん。12の自治体に届けられた複数の手紙」 Posted on 2022/12/27 Design Stories  

 
名を名乗らず見返りを求めず、施設などに寄付を行う、いわゆる「あしながおじさん」が、数週間前からフランス北部に出現しているという。
こうした動きは「タイガーマスク運動」として日本でもよく知られているが、フランスではほぼ初めてとのことで、各関係者がマスコミを通じて感謝の意を表明している。

匿名の手紙が最初に届いたのは、ベルギー国境に近い仏北部の町、ワームウト(Wormhout)の市役所だった。
封筒の中には「ワームウト市長様、テレトンに送ってください。病気の研究にどうぞ。メルシー」という簡単なメッセージと共に、50ユーロ札が6枚、10ユーロ札が10枚入っていた。

※テレトンとは、難病の子供たちを支援するフランスの有名なチャリティー・プロジェクト。1987年から続いており、主にTV番組を通じて寄付金が募られる。
 

パリ最新情報「フランスにも現れた、匿名のあしながおじさん。12の自治体に届けられた複数の手紙」



 
同市役所に40年間勤めている担当者によると、「今まで匿名の手紙は何度も受け取ったが、こうした形は初めて」とのことだ。
こうしてワームウトを皮切りに、謎の手紙がフランス北部、合計12の市町村に数週間にわたって届けられる。
中には一貫して300〜400ユーロ(約42000円〜56000円)の現金と紙の切れ端に書かれたメッセージが発見されたといい、差出人はいずれもテレトンへの寄付を希望していた。

この匿名の寄付者には憶測が飛び交った。
各市町村は同一人物だと見ているが、書かれたメッセージには誤字脱字が散見され、ところどころに文字の震えも見られたという。
またどの封筒にも暗号のような9桁の文字が記されていた。
そのため現地では「宝くじに当たった人ではないか」「相続人のいない高齢者なのでは?」とさまざまな議論が交わされたのだが、最終的に仏紙ル・パリジャンが市町村の了解を得て、封筒やメモ書きの画像を元に筆跡鑑定を依頼している。

鑑定結果によると、「差出人が高齢の男性や女性であるとは断定できない。筆跡が生涯を通じて安定している人もいれば、書く都度に別人かと思われるほど変わる人もいる。筆跡が変化する理由はさまざまだが、震えに関しては病におかされている可能性が高い。ただし文字がふらついていても、この筆跡からは差出人の明確な意志を感じ取ることができる」ということだ。
 

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9桁の文字については、「仕分けセンターの内部識別番号のようなもの」と各郵便局は指摘しているが、正確なところはまだ分かっていない。
投函場所に関しても、仏北部のノール県やパ・ド・カレー県であることを除いては、郵便物がどこから投函されたかを正確に特定するのは難しいという。

こうした事情を鑑みて、各自治体は差出人の匿名性を尊重しこれ以上は追わない、とした。
なおこれまでに集まった現金は合計で12000ユーロ(約168万円)にも及んでおり、自治体を通してテレトンの団体に確実に届けられている。
テレトンのディレクターであるブリュノ・デブルー氏は12月25日、「前例のない、非常に美しい物語」とし、マスコミを通じて差出人の行為に感謝すると共に敬意を表したい、と述べた。
 

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フランスでは郵便物に紙幣を入れることは禁じられている。
しかしワームウト市長は「このような慈善的な行為は歓迎すべきことだ」と述べ、今回に限り例外的に対応したとしている。(大)
 

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