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パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」 Posted on 2022/02/26 Design Stories  

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※撮影カメラの画面にうつる料理

 
パリを舞台にした、Netflixオリジナルドラマ「エミリー、パリへ行く」は大きな話題を呼び、シーズン2が年末に放映開始、既にシーズン3、4の制作が決まっているほどの人気ぶり。
主人公エミリーの想い人、ガブリエルは料理人だが、実はその料理、舞台裏では日本人女性が作っていたのだ。
今回は、パリ郊外のご自宅に伺い、フードコーディネートの制作秘話だけでなく、ドラマに登場した料理のレシピもご教授いただいた。
 

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※素敵なテーブルセッティング

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※窓辺でハーブを自家栽培



 
自宅でフランス料理教室を開く、林妙玲(ハヤシ・ミョウレイ、Myorei Le Ruyet)さん。
料理教室といっても、その内容は調理学校さながらの本格的なものだ。
というのも、林さんはプロの料理人として、世界のレストラン、ホテルを渡り歩いてきた実力者なのだ。
NYの名門調理学校CIA(the Culinary Institute of America)を卒業後、100人にひとりしか入れないといわれる、三ツ星レストラン「アラン・デュカス(Alain Ducasse)」に料理人として就職。
その後も、数々の星付きレストランでも経験を積み、より良いサービスを身につけるべく、インターナショナルにアイルランドやプラハの一流ホテルでサービス業務にも従事した。
 

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※今月のレッスンの一皿「ホタテのテリーヌ、柑橘系マーマレード添え」

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※自宅の洗面台に揺らめくキャンドルはホテルのよう

地球カレッジ

 
「エミリー、パリへ行く」にフードコーディネーターとして、本格的に参加したのは、続編のシーズン2からだが、シーズン1でも声がかかっていた。
林さんは、それまでフードコーディネートの経験がなかったことに加え、「見た目が映える料理が求められるが、やはり味が大事」という信念から、引き受けることをためらっていた。
季節の有機栽培の食材を重視し、基本は塩やハーブというシンプルな味付け。
食材だけでなく調味料にもこだわりを持っている。
 

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※自宅のキッチンに立つ林さん

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※プロ仕様のキッチン



 
シーズン1で「どうしても」と頼まれて、自宅で作って渡したのが「コック・オ・ヴァン」。
それをきっかけに、シーズン2での料理監修も懇願され、引き受けることになった。
フードコーディネートは未経験ながら、「コック・オ・ヴァン」が好評だったことが、自信に結びついたという。
シーズン2の撮影時期は、新型コロナによる自粛と規制の真っ只中。
撮影時の人数制限で、毎回、現場に立ち会えるとは限らなかった。
あるときは、自宅で盛り付けまで完了させた15皿分の料理を、そのままの状態で撮影トラックが運んでいったこともあった。
 

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※シーズン1第8話の「コック・オ・ヴァン」

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※撮影現場で調理する林さん

 
また、出演者の多くは、ベジタリアン。
ドラマの中では、肉のしたたるステーキや、ハンバーガーをほうばるシーンもあったと記憶している。
だが、それらは出演者の嗜好に配慮して、他の素材に置き換えられていたそうだ。
例えばシーズン2の第1話では、ガブリエルが自分のレストランのオープニングで、故郷ノルマンディーの郷土料理の「トリッパ」を作ったが、これは日本で言うところのモツ煮込み。
好き嫌いが分かれやすいことに加え、出演者の中には肉であるということで、食べることが難しい人もいる。
そこで、林さんはトリッパを油揚げに置き換えた。あの豆腐を揚げた日本食材だ。
油揚げを切ってひっくり返すと、トリッパの質感に似ているということに気づいたそう。
組み合わせたソースも、実はお出汁。
見た目はトリッパだが、味は揚げ出し豆腐のような仕上がりになっていたということだ。
 

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

※シーズン2第5話の油揚げを使った「ノルマンディー風トリッパ」



 
さて、ここからはドラマのシーズン2の第5話で登場した「鯖の塩焼き 苺と白アスパラガスのサラダ Maquereau en filet poèlé aux fraises et asperges blanches」の作り方をご紹介。
 

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

パリ最新情報「『エミリー、パリに行く』の美しい料理を支える日本人女性の撮影秘話」

 
材料(2人前):
– 鯖一切れ 110g
– くし切り苺 大2個/小4個
– 白アスパラガス 2本
– 薄皮剥き生そら豆 小サイズ 15g
– 熟した小角切りイチゴ 2個 50g
– みじん切りエシャロット 5g
– シェリー酢 2ml
– マスタード 2g
– オリーブ油 25ml
– 塩 適量
– 食用花 イべリス 飾り用 (お好みで)

作り方:
1) アスパラは根元4~5cmを切り落とす。ピーラーで、はかまを取り塩茹でする。茹で時間の目安は約4分。
2) 冷水に浸し、充分に水気を取り乾かす。
3) 5cmの長さにアスパラスを切り揃え、縦半分に切る。
4) サバに切り目を入れ、塩を2gまぶした後、20分休ませる。
5) 魚焼きグリル、もしくはフライパンでサバを焼く。
6) 熟した苺を、目の細かい漉し器に入れて、フォークの裏側で潰しながら汁を絞る。
7) 容器に上記の苺汁と、エシャロット、マスタード、苺汁、シェリー酢、オリーブ油、塩を入れ攪拌させながらドレッシングを作る。
8) 塩鯖を切り分けて、器に盛り、苺、 白アスパラガスと、生のそら豆を散らしドレッシングをかける。

ポイント:
鯖を20分塩漬けする事で臭みを取り除き、さらに苺の酸味と白アスパラガスの苦味で、鯖の風味があっさりまろやかに。
イべリスの花がほんのりスパイシーで、この一皿をよりいっそう盛り上げてくれる。
 

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※「鯖の塩焼き 苺と白アスパラガスのサラダ」の調理シーン



 
アラン・デュカスの厨房にいた頃は、メモを取ることは許されず、その場でみて覚え、量も感覚で身につけていったそう。
ここで紹介した詳細な分量は、林さんの長年の経験で身につけた感覚を、数値化したものといえる。
ほんの数グラム、数mlという世界で味を作り上げていることがわかる。
Design Stories読者の方もエミリーが食べた味を再現できれば、と思いレシピの提供をお願いをしたが、そんなプロの微細な感覚も疑似体験できそうだ。
今後は、エミリーの恋の行方以上に、登場する料理にも目が離せない。(ウ)

林妙玲さんのインスタグラム:https://www.instagram.com/paris._myoreiscuisines/
 

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