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パリ最新情報「フランス歴代最年少、ガブリエル・アタル新首相とは?」 Posted on 2024/01/11 Design Stories  

 
1月9日、エリザベット・ボルヌ前首相の辞任を受け、ガブリエル・アタル氏が新首相に任命された。
ガブリエル・アタル新首相は1989年生まれの34歳。
フランス第五共和政において最年少の首相となる。
 

※BFMTV 公式Xより



 
ガブリエル・アタル新首相は就任前、ボルヌ内閣で教育大臣を務めていた(23年7月から約半年間)。
当時も「最年少の教育大臣」として話題となっていたのだが、任期6か月のうちに学校でのいじめ撲滅を最優先課題としたほか、公立校での試験的な制服導入、イスラム教のアバヤを含む宗教的な衣装の使用禁止といった大胆な改革を掲げ、国民から大きな注目を集めた。
なおアタル氏は2023年末の世論調査で、「フランス国民が最も支持する政治家」のトップに選ばれている。
 



 
しかし2017年に国民議会議員に選出されるまでは、アタル氏の存在を誰も知らなかったという。
有権者に広く知られるようになったのは、それから数年後のパンデミック時、ジャン・カステックス前首相の下で政府報道官を務めた時だった。
以降、異例のスピード出世を果たした政治家として、その人物像とともにメディアで大きく取り上げられるようになった。
またアタル氏は、政府報道官時代にTwitch(動画配信サービス)とYouTubeにて「Sans Filtre(フィルターなし)」という若者向けの番組の司会を務め、インフルエンサーたちとフランスの政策について議論を交わした経験がある。
さらにインスタグラムやTikTokといったソーシャルネットワークを駆使していたことから、アタル氏の知名度は有権者だけでなく若年層からも高かった。
 

パリ最新情報「フランス歴代最年少、ガブリエル・アタル新首相とは?」



 
なお仏紙ル・フィガロが9日夜に行った最新の世論調査では、フランス国民の53%がガブリエル・アタル新首相の就任に「満足」だと答えている。
理由で最も多いのは「ダイナミズム(77%)」で、続いて「共感力(70%)」、「対話への寛容さ(64%)」、「有能さ(62%)」だった。
一方、彼の若さを長所と見る回答者は全体の3分の1(35%)に過ぎず、半数(49%)の回答者は、34歳という歴史的な若さにもかかわらず、それを長所とは考えていないことが明らかになった。
これは、「アタル新首相が同性愛者であることは、彼の年齢や出自と同じように単なる情報のひとつに過ぎない」とリベラシオン紙が報じたように、国民が同氏の手腕を最重要視している結果だと考えられる。

事実、フランス国民の多くは、トップの顔ぶれの入れ替えではなく、依然として続くインフレや生活面の問題改善に関心が高い。
加えて2022〜23年に打ち出された失業保険改革、新移民法、強行採決された年金改革などで、マクロン政権も以前の求心力を失いつつある。
国民議会では与党が過半数を確保できず、野党が力を伸ばしているのも現状だ。
ガブリエル・アタル新首相は就任後すぐに上記の問題と直面するわけだが、9日に行われた首相引き継ぎ式では、「フランスの生きた力を結集する。すべての国民が私に頼ってほしい」と力強く述べている。
“マクロン大統領のかつての姿に重なる”と噂される新首相は、問題多きフランスをどうリードしていくのだろうか。今後の発言にさらなる注目が集まる。(内)
 

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