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パリ最新情報「2022頭の羊、シャンゼリゼ通りに放牧」 Posted on 2022/03/08 Design Stories  

世界で最も有名な通りが、動物で埋め尽くされた。
毎年多くの注目を集め、今年も大盛況に終わったフランスの巨大イベント「国際農業見本市」。最終日の6日、「前代未聞のプロジェクト!」と銘打って、なんと西暦と同じ2022頭の雌羊がシャンゼリゼ通りに放たれた。

この羊さんたち、フランス南西部のピレネー山中にあるベアルンという町からやってきた。2000頭を超えるメンバーが、この日のために、ピレネー山脈から山下り。目元が黒く牛柄のような羊に、毛を一部カラフルに染められてお祭り気分の羊。みんな大人しく列になって、そして結構、速い。

隊列を乱さず小走りしている様子には、何とも言えない愛らしさがある。そこに、羊飼いに先導された牧羊犬、牛や馬、ロバも加わって、この日のシャンゼリゼ通りは人よりも車よりも動物が多いという、恐らくシャンゼリゼ通り史上類を見ない事態となった。

このイベントは、「クレイジーなベアルンの娘(羊)たち」と題され、羊の放牧以外にも、数々のアーティストやダンサー、サーカス団などがベアルンから上京し、歌に踊りに、1日かけてシャンゼリゼ通りを賑わせた。
イベントの途中に2時間限定で放牧が行われたが、観衆の一番のお目当てはやっぱり羊。放牧が始まると一気に人が増え、広いシャンゼリゼ通りが、一気に羊と人でいっぱいになった。

パリ最新情報「2022頭の羊、シャンゼリゼ通りに放牧」

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そもそもなぜこのようなイベントが行われたのか? 
実は「移牧」が、2020年にフランスの無形文化遺産に指定されたのだ。これはユネスコ世界遺産として承認されるために必要な最初のステップで、ベアルンの人々ももちろん「移牧」のユネスコ登録を狙う。

ピレネー地方の小さな町で受け継がれているこの「移牧」という伝統は、少なくとも6000年以上前からベアルンの人々の日常生活に深く根付いているという歴史があるが、一般にはあまり知られていない。
「移牧」は、魂と精神を鍛えるとも言われており、ベアルンの人々にとっての誇りなのだ。更に、ベアルンのすぐ隣には有名なバスク地方があり、ベアルンの存在はいつもバスクの陰に隠れがちであった。これを機に、ベアルンの知名度を上げたいという地元民の思惑もある。
イベントには、ピレネー地方観光局長も参加した。
今回のイベントは、ベアルン人による、ベアルン人のための催し物なのだ。

パリ最新情報「2022頭の羊、シャンゼリゼ通りに放牧」



見渡す限りの羊、羊、羊。「ブランド通り」とも言われ、ハイブランドのブティックがずらりと並ぶ、世界に誇るシャンゼリゼ通りが、高原の牧草地になったかのような迫力だった。一般に広く「移牧」を知ってもらいたいというベアルンの人々の狙いは大成功だったと言えるのではないだろうか。

最近で言うと黄色いベスト運動やワクチンパスへの抗議など、フランスでは日本に比べデモ運動がかなり頻繁に行われている。この日シャンゼリゼ通りを下っていった羊たちも、さながらデモ行進に参加している民衆のように堂々とした出で立ちで、私たちを魅了してくれたのであった。(ケ)
 
その時の映像はこちら⬇️

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