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パリ最新情報「移民に対する規制を強化へ。新移民法に揺れるフランス」 Posted on 2023/12/28 Design Stories  

 
12月19日、1年半にわたる長い議論の末、新移民法がフランスの上下両院で可決された。
新移民法では、出生地主義による国籍付与の見直しなどが含まれており、移民に対する規制がこれまでよりもさらに厳しくなる。
新しい法案の主なポイントを以下の通りにまとめた。
12月19日、1年半にわたる長い議論の末、新移民法がフランスの上下両院で可決された。
新移民法では、出生地主義による国籍付与の見直しなどが含まれており、移民に対する規制がこれまでよりもさらに厳しくなる。
新しい法案の主なポイントを以下の通りにまとめた。
 



 
・非EU系外国人が社会保障を享受するまでの期間を長期化
非EU系外国人への社会保障給付は、非就労者の場合は正規滞在5年以上の実績があることが受給資格として求められる(就労者の場合は30か月)。

・就労している不法移民の正規化
フランスの各県庁は、人手不足の職場で働く非正規労働者の身分を正規化する絶対的な権限を持つ。
過去24ヶ月のうち12ヶ月以上就労し、3年以上フランスに居住している不法移民の場合は、1年間の滞在許可がケースバイケースで与えられる。
この措置は2026年末まで適用される実験的なものである。

・出生地主義の見直し
外国人の両親からフランス国内で生まれた人がフランス国籍を取得することを認めていた「ドロワ・デュ・ソル」は、もはや適用されない。
今後は、16歳から18歳の間にフランス国籍を申請しなければならない。

・重罪を犯した者の国籍はく奪
警察官に対する故意の殺人罪等で有罪判決を受けた二重国籍者は、フランス国籍をはく奪される。

・在留許可を持つ外国人による家族の呼び寄せは、24カ月の在留期間、安定した収入、健康保険への加盟が必要となる。
ほか、不法移民に対する公営医療へのアクセスを制限する立法措置が取られるなど。
 



パリ最新情報「移民に対する規制を強化へ。新移民法に揺れるフランス」

 
新法案を巡って、フランスのマクロン大統領は、「フランスは移民問題に直面しており、新移民法は不法移民を減らし、合法移民の統合を促進するための必要な盾だ」と述べている。
また仏TV番組「BFM TV」が行った世論調査によれば、フランス国民の10人に7人が今回の新移民法案に賛成しているということだ。

しかし移民法の厳格化については、フランス国内で波紋が広がっているのもまた事実である。
12月23日にはパリやボルドーで新法案の撤回を要求するデモが行われたほか、パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏が“移民の選別”を拒否する意向を示した。
※新移民法では、フランス領土からの退去義務のある者は、強制送還を待つ間、緊急の宿泊施設にしか収容できないと定められている(パリ市の定員は120人のみ)。
イダルゴ市長は特にこの制度に反対している。
パリ市で子どもの路上生活者が急増していることが背景にある。
ところが、パリ市議会の右派がイダルゴ市長に「無条件は無責任だ」と発言するなど、現状では反対意見がさらなる反対派を呼び起こしている。
 

パリ最新情報「移民に対する規制を強化へ。新移民法に揺れるフランス」



 
今回の新移民法は、年金改革を強行突破で乗り切ったマクロン大統領が「次なる重要立法」として位置付けていたものだ。
ただ極右派に反対していた一部の与党議員が今回で離党を示唆するなど、新移民法は仏政府内にも大きな爪痕を残してしまった。
こうした移民問題は長きにわたって議論されているのだが、デリケートな問題であるほか、フランスを分断しかねない重要なテーマの一つだと言える。(内)
 

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