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パリ最新情報「パリの穴場スポット、モンマルトルのロマンチック美術館」 Posted on 2022/02/08 Design Stories  

パリには大小含めて約200の美術館がある。
パリが「芸術の都」と呼ばれる理由には、美術館や名作が多くあるだけでなく、「どんな人にも文化に触れる権利がある」と、一部の入館料を無料にしていることが挙げられるのではないだろうか。

パリ最新情報「パリの穴場スポット、モンマルトルのロマンチック美術館」



モンマルトルにあるロマンチック美術館(Musée de la vie Romantique)は、パリ市が管理する入場無料の美術館だ。
ロマンチックな雰囲気の美術館?と想像してしまうが、ここはフランスにおける「ロマン主義」の代表的なアーティストを讃えて残された邸宅美術館なのである。

ロマン主義を代表する人物としては、ショパン、エドガー・アラン・ポー、ゲーテ、森鴎外などがいる。教科書にも登場するようなスーパースターたちだ。
もちろん、フランスでもロマン派の芸術家たちは大きな功績を残している。

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作家はジョルジュ・サンド。音楽家はショパン。画家はドラクロワ。
そんな豪華な面々が集まり、夜な夜な芸術談議に明け暮れた場所、それがモンマルトルのロマンチック美術館なのである。
もともとはロマン派の画家、アリー・シェフェールの邸宅だったが、のちに子孫がパリ市に寄贈した。

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ロマンチック美術館はとても雰囲気の良い場所で、入ってほんの数分で心が温まる。
陰なムードはまったく感じられず、全体的な印象も、柔らかい。
しかし、ロマン主義は美しいことだけでなく、感情の起伏や、人の矛盾さえも表現したという。

展示されている絵画には複雑な三角関係をテーマにしたものもあって、人間の不安・嫉妬といった本来なら隠しておきたい感情もはっきりと描かれていた。
確かに、古典主義の人物画に比べると、圧倒的に表情が豊かなものばかりだ。

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良くも悪くも「人間らしさ」を解放したロマン主義だからこそ、角が取れてこのような柔らかい雰囲気が出来上がったのかもしれない。
そしてそれは、現在のフランスに多大な影響を与えていると思わざるをえなかった。
主観第一主義、恋愛賛美、ケセラセラな人生哲学など、今のパリジャン・パリジェンヌに欠かせないエッセンスがロマン主義にはある。
なんとなくパリとロマンチック美術館が共鳴しているように見えた。

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また、天才ピアニストのショパンと、男装の作家ジョルジュ・サンドは恋人関係にあり、この館の常連であった。
当時、奇天烈な女性と評判だったジョルジュ・サンドとショパンは凸凹カップルに見えたようだが、お互いの才能に心底惚れ込んでいたのだとか。

事実、ショパンはジョルジュ・サンドとの交際中に「子犬のワルツ」や「幻想」といった名曲を生み出した。
しかし、繊細で病気がちなショパンは、安定した幸せを手に入れることができず苦悩したとも語られている。
そしてそんな彼の心の微動をとらえた作品が、ロマン主義を代表する音楽となっているのだ。

かつての天才作曲家には、孤独な人が多かった。
しかし、後世に珠玉の名曲を生み出すことを命に受け、 己の人生の幸せを犠牲にするという命を背負ってこの世に生まれ出た。
そう考えると、ショパンが残した数々の名曲が今も愛されていることこそが、彼の生きた証であり、ひいては彼の本当の幸せだったのではないか、と思う。

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ほかにも、ロマンチック美術館にはジョルジュ・サンドの作品が多く展示されていて、物書きとしてのデビュー作であるフィガロ紙の原稿や、髪の毛まで、彼女に関するありとあらゆる資料が収められている。
一時だけであっても、二人はこの場所で確かな愛を育んだのだろう。

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無料で入ったのに、大きな豊かさをもらえるロマンチック美術館。
金額うんぬんではないのだが、豊かな気持ちになる、これがやはりアートの良いところだと思った。

そしてロマンチック美術館は、春先から初夏にかけて特に美しく良く映える。
併設のカフェも春に再開し、パリらしい光景を見ることができる穴場のスポットだ。
コロナに区切りがつき、今年こそは自由に旅行できる世界に戻りますように。(ル)

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