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パリ最新情報「不明の英少年が南仏で発見され、年末のフランスに波紋を残す」 Posted on 2023/12/24 Design Stories  

 
年の瀬が迫るフランスで、不可解な事件が起き話題となっている。
6年間にわたり行方不明となっていたイギリスの少年が、フランス南部で発見されたのだ。
少年は12月13日の明け方に、フランス南部ピレネー山脈のふもとを一人で歩いていたという。
少年を発見したのは、偶然通りかかった地元の配達員だった。

自身を「ザック・エドモンド」と名乗った少年は、畑や野原から食べものを失敬しながら四日間も歩き続けていたそうだ。
フランス語をほとんど話せなかったので意思疎通が難しかったというが、不信に思った配達員がワゴンの中にある荷物を見せ少年を安心させると、少しずつ真実が語られるようになった。
 



 
少年の本当の名はアレックス・バティで、2017年から消息不明となり本国イギリスにて捜索願を出されていた人物だった。
アレックス君はまた、実の祖父と母親とともに行方が分からなくなっていた。
イギリス警察によると、11歳のアレックス君が消息を絶ったのは2011年、祖父と母親とスペイン旅行に出かけたあとだった。
なおこの母親は離婚後に親権を失っており、捜索願は法的な保護者である祖母から出されていた。
(アレックス君の両親、祖父母はいずれも離婚している)

アレックス君が保護されたことで明るみになったのは、3人がスペインやモロッコ、フランスを転々とし、遊牧民のような生活を送っていたということだ。
3人が行く先々で拠点としていたのは、「スピリチュアルなコミュニティ」である。
各コミュニティでは十数人ほどが集まり、簡単な家庭菜園を作るなどして瞑想的な生活を送っていたという。
 

パリ最新情報「不明の英少年が南仏で発見され、年末のフランスに波紋を残す」

※アレックス君が働いていた南仏の宿泊施設



 
そんな3人がフランスに入ったのは2021年のことだった。
母親を南仏のコミュニティに残し、アレックス君は人口数十人の村、カンシュルラグリー(Camps-sur-l’Agly、フランス南部の山間部)の宿泊施設で「住み込み」として働き始める。
そこではアレックス君の祖父も一時的に働くことになったのだが、施設のオーナー夫妻は未成年で働き者のアレックス君を特に気にかけていたそうだ。
23年に入ってからは、学校を知らないアレックス君を地元のIT専門校に通わせようと、夫妻で試みたこともあった。

しかし身分証も持たず、血縁関係のない人物が同伴しているアレックス君を不信に思った学校側は、同年の7月に地元警察に通報する。
ところがその日、ストライキの最中だった警察は「また連絡する」と言い残したまま、まったく取り合うことがなかった。
 



パリ最新情報「不明の英少年が南仏で発見され、年末のフランスに波紋を残す」

 
この度保護されたアレックス君は、母親が「次はフィンランドに行く」と言い出したことが逃げ出したきっかけだと語った。
ただ同時に、母親や祖父が逮捕されることをとても心配したという。
偽名を使ったことや嘘の供述(四日間歩き続けたが本当は二日であったことなど)の本当の理由は、彼らを守るためだったのだそうだ。
現在のアレックス君はイギリスに戻り、法的な保護者である祖母の元で暮らしているが、実の母親と祖父の行方についてはまだ分かっていない。

フランスではこのミステリアスな事件が今も後を引いている。
肉親のあいだで起きた誘拐事件、山間部の特殊なコミュニティ、そして仏警察の体制など、事件の背後には未だに多くの疑問が残るためだ。
一方でイギリスに戻ったアレックス君は英紙“ザ・サン”のインタビューに対し、「自分の将来のためにはそうしなくてはならなかった。今も母親と祖父を愛しており、自分のことで心配をかけたくない」と語っている。(大)
 

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