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パリ最新情報「パリでオリンピック閉会式を生中継!現地レポート」 Posted on 2021/08/10 Design Stories  

8月8日に行われた東京オリンピック閉会式のラストで、次回開催地であるパリのバトンタッチ映像が披露された。2016年のリオデジャネイロオリンピック閉会式でも東京オリンピックへのバトンタッチ演出があり、日本の魅力がたっぷりと詰まった映像が話題となったが、今回も同様の展開ということになる。

当日、パリの中継地にリアルタイムで出席することができたのでその様子を詳しくご紹介したい。

パリ最新情報「パリでオリンピック閉会式を生中継!現地レポート」

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場所はセーヌ川を隔てた、エッフェル塔の対岸にあるトロカデロ庭園の特設会場。オリンピック開催期間中はパブリックビューイング「Live the Game」が設置されていたため、多くの人が訪れた。

この日は閉会式中に特設会場の様子が中継されるということで、朝の9時頃からたくさんの市民が列をなした。12時近くにはピークとなり、会場には約6500人が集まったという。

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7月21日から始まったフランスの法令で、文化施設の入場には衛生パスポート(ワクチン2回接種証明もしくは48時間以内のPCR検査陰性証明)の提示が不可欠である。もちろんこの会場でも衛生パスポートと身分証明書の提示が求められた。(筆者はワクチン2回接種済みです)それに加え、観客の全員がマスク着用が義務であった。

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13時に記念式典が始まると、会場のムードは一気に盛り上がった。3年後の地元開催に向けて機運を盛り上げていこうと、東京で行われている閉会式の様子が大画面で放映された。

ほどなくしてパリ五輪組織委員会の会長、トニー・エスタンゲ氏が登壇。「パリ大会は使用する施設の95%は既存の施設を活用し、パリを象徴する歴史的な建造物が競技会場になる。華々しさと持続可能な社会の実現とのバランスをいかにとるかが問われることになる」と述べた。

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続いて、フランス柔道界のスターで今大会メダリストのテディ・リネール選手が登場。会場から割れんばかりの歓声が巻き起こり、しばらくの間ファンサービスに答えた。東京オリンピックについては「素晴らしかった。日本人に感謝を伝えたい」と語り、司会者とともに会場を盛り上げた。さらに帰国したばかりのメダリストたちがも続々と登場し、選手たちの凱旋報告に大きな拍手が送られた。

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東京オリンピックの閉会式は、この特設会場でも生中継され、大勢の市民たちがオリンピックの旗が引き継がれる様子を見守った。東京の小池都知事からアンヌ・ゴダルゴ市長に旗が渡るとひときわ大きな歓声があがった。

閉会式の終盤、バトンタッチ映像の披露開始の14時半(日本時間21時半)近くになると、会場ではカウントダウンの声が。

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バトンタッチ映像は、フランス国立管弦楽団による国歌「ラ・マルセイエーズ」のオーケストラ演奏で始まった。開始直後のフルート奏者は「スタッド・ドゥ・フランス」の屋根に登場。「スタッド・ドゥ・フランス」は収容人員8万人の大型競技場で、サッカーフランス代表およびラグビーフランス代表のホームスタジアムである。2024年のパリ五輪はこの場所で開会式の一部、陸上競技などが開催される予定だ。

さらにセーヌ川ではバイオリン演奏が、ルーブル美術館の「サモトラケのニケ像」の前でも演奏が披露された。このオーケストラ演奏はパリ大都市圏6カ所に分かれて行われ、映像でつながれたという。

ラストパートは、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士のトマ・ペスケ氏が担当。宇宙から世界に向けてサックスで演奏にリモート出演した。ちなみにトマ・ペスケ氏はエアーフランスのパイロットから宇宙飛行士になった人物で、柔道やサックス演奏を趣味とし、人柄の良さでも知られるフランスのスター的存在である。

画面は切り替わり、フランスのBMX(バイシクルモトクロス)選手たちが、パリのランドマークを華麗にライディングしながら走行。BMXのライダーたちは、フェンシングの会場となるグラン・パレの屋根の上を悠々と走るなど、圧巻のパフォーマンスを見せた。(フランスはフェンシング強豪国。)ヴェルサイユ宮殿、オペラ・ガルニエなど歴史的建造物を経た後、コンコルド広場に場所が切り替わった。このコンコルド広場はパリ五輪から新競技として追加されるブレイクダンスの会場でもある。

冒頭のクラシック音楽で始まる伝統的なパリの演出と、後半のストリート文化に彩られたパリ。まさにパリの今を反映しているといった感じで、その対比が非常に印象的だった。

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この後、特設会場と生中継がつながると会場の盛り上がりはクライマックスに。エッフェル塔、メダリストたちとともに市民の様子がライブで映し出された。閉会式での生中継は史上初の試みだったそうだが、2024パリ五輪が目指す「参加型オリンピック」をここで披露した形となった。

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そして仏空軍のアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」が赤・白・青のトリコロールのカラースモークを添えてパリ上空を飛行。低空飛行で魅せた仏空軍のパフォーマンスは素晴らしく壮大で、辺り一帯は大歓声に包まれた。

エッフェル塔からはエマニュエル・マクロン大統領も参加。オリンピックの理念である「より速く、より高く、より強く、共に」をフランス語で伝えると、特設会場のビジョンには「ありがとう、東京!メルシー、東京!」の文字が日本語・フランス語で映し出された。

実はエッフェル塔では、この中継に合わせてサッカーコート一面分の巨大な大会ロゴ旗が実際に掲げられる予定だったが、強風のため当日午前中に中止が発表された。安全上の理由から代替画像での演出に急遽切り替わったという。

今回、特設会場で目立ったのは、次期開催地であるパリへの期待とともに、東京に向けての感謝の言葉だった。賛否両論あった東京オリンピックではあったが、メダリストたちやパリ五輪関係者が次々に開催国に謝辞を述べていたのが心に残った。

東京からバトンを受け取ったパリは、次回100年ぶりのオリンピック開催国となる。いま現在「オリンピックに興味なし」といったフランス人も存在するが、開催間近になったら誰もが熱くなるのではないだろうか。

東京オリンピックの開閉会式の共通コンセプトが「Moving Forward」であったように、今回の中継会場からは「前に進む」エネルギーを多分に感じることができた。(大)

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